ASM HYDRASYNTH

ここに注目:

  • 8ボイスのウェーブモーフィングシンセサイザー
  • 完全なポリフォニックアフタータッチをサポート
  • 素晴らしいコストパフォーマンス

ASM (Ashun Sound Machines) という新しいメーカーから初の商品となるハードウェア・シンセサイザーが発売されました。その名は、HYDRASYNTH 、49鍵のキーボードモデルとデスクトップモデルの2つのバージョンがあります。

49Key Model
Desktop Model

HYDRASYNTH 最大の特徴

HYDRASYNTH は、最新のテクノロジーを搭載したシンセサイザーで、良質な音源システムやサウンド、わかりやすいレイアウトとオペレーションなどはもちろんですが、その部分はあとで説明します。

何と言っても最大の特徴は、高級なシンセサイザーやコントローラーでもなかなか装備されていなかった、ポリフォニック・アフタータッチを標準で装備しているところでしょう。

ポリフォニック・アフタータッチ

通常のアフタータッチ

もちろん、通常のシンセサイザーにもアフタータッチは装備しています。ただし、そのアフタータッチの動作が全く異なります。

例として、アフタータッチにフィルターのカットオフがアサインされている状態で和音を押さえたとします。

和音を押さえた状態で、ある特定のキーのみを強く押し込む(アフタータッチ)と、和音で発生しているサウンド全体のフィルターがアフタータッチ・コントロールに反応してフィルターが開いた和音のサウンドになります。

特に違和感を感じることは無いと思いますが、これが今までの普通のアフタータッチ・サウンド、ベロシティ・コントロールされたサウンドとして慣れ親しんできたサウンドの挙動です。

ポリフォニック・アフタータッチ

ポリフォニック・アフタータッチは、ビンテージのポリフォニック・シンセサイザーではとても有名な、YAMAHA CS80 など高級機種がハードウェア・アナログ・シンセサイザーとして、ポリフォニックのアフタータッチを搭載し、シンセサイザーのサウンド表現を格段にアップさせた機能の一つとして、多くの音楽作品でその効果を聴くことが出来ます。

有名なサウンドは何と言っても映画、「ブレードランナー」でバンゲリスが演奏していたサウンドでしょう。

ASMでは、そのポリフォニック・アフタータッチを POLYTOUCH™ という同社の技術として復活させ、搭載しました。

キー毎に独立したプレッシャーの情報を信号として処理しなければいけないので、結構複雑なハードウェア処理になり、なかなか今までのシンセサイザーでは搭載してませんでした。その機能を売りとして、出してきたのは間違い無いでしょう。そのサウンドからも、かなりなインパクトを感じます。

音源方式

音源部分は3基のオシレーターで8ボイス、ASM 独自のウェーブ・モーフィング・シンセシス・エンジン(219のシングルサイクル波形)を搭載しています。

OSC 1、OSC 2、OSC 3は、219種類のシングルサイクル波形から1つを選ぶことができ、OSC 1とOSC 2のみ、Wave Scan(Wave List)モードでは、8種類の波形をセットしてリストを作成し、モジュレーションソースを使用して1波形ずつ、モーフィングコントロールできる柔軟性の高いオシレーター・モードです。

HYDRASYNTH には、一見変わった名前の変調機能があります。パネル表示では、「MUTANT1~4」、機能の名称としては、「ミューテーター」が搭載されており、この部分で詳細な波形の変調を行うことができます。

MUTANT 1、MUTANT 2、MUTANT 3、MUTANT 4 の変調パターン。

  • FM-Lin
    クラシックなFMサウンドを生成します。外部オーディオ入力を含む複数のFMソースを選択する事ができます。
  • Wavestack™
    入力されている波形を5つに複製してユニゾン出力します。複製された波形のそれぞれのデチューン量を調節することで、かなり厚みのある波形を生成できます。
  • OSC Sync(ハードシンク)
    クラシックなハードシンクサウンドを得られます。ウェーブテーブルをモーフィングを組み合わせることでより複雑な効果が得られます。
  • PW-Orig(パルスウィズ)
    入力されている波形のパルス幅を変調します。
  • PW-Sqeez(PWスクイーズ)
    一般的なPW効果よりもなめらかな変調をします。
  • PW-ASM
    入力されている波形を8つのスライスに分割し、各セクションで発生するパルスウィズの量を設定できます。
  • Harmonic(ハーモニックスウィープ )
    入力されている波形に倍音成分を付加します。

またミューテーターの内部は、柔軟なルーティングが可能になっているため、サウンドの微調整や歪みサウンドの生成、サウンドの逆再生など、サウンドの変調をほぼ無制限に行うことができます。

もちろん、ノイズの生成やリングモジュレーターによる変調も可能です。ノイズは、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウンノイズが生成することが出来ます。

高性能な2つのフィルター

HYDRASYNTH には、並列または直列に接続可能な2基のフィルターが搭載されています。

FILTER 1
新しいタイプのフィルターからクラシックなフィルターまで、11個のフィルターモデルを使用することができます。

  • LP Ldr12 12dB Ladder filter
  • LP Ldr24 24dB Ladder filter
  • LP Fat12 12dB Ladder filter
  • LP Fat24 24dB Ladder filter
  • LP Gate Low Pass Gate filter
  • LP MS20 Low Pass filter with an MS-20 flair
  • HP MS20 High Pass filter with an MS-20 flair
  • LP 3-Ler The Low Pass flavor of a boutique modular synth
  • BP 3-Ler The Band Pass flavor of a boutique modular synth
  • HP 3-Ler The High Pass flavor of a boutique modular synth
  • Vowel Vocal formant filter

フィルターのオプションには DRIVEもあるので、ちょっと歪みかかった厚みのあるフィルターサウンドを作り出すことも出来ます。

FILTER 2
連続可変可能なマルチモードの classic 2-pole state-variable filter を搭載しています。クラシックな SEMフィルターの動作と同じように、ローパス/バンドパス/ハイパスのキャラクターを連続的に切り替えることが出来ます。

LFOとエンベロープ

HYDRASYNTH は、LFO、エンベロープを5基も搭載しています。これだけの変調先があればどんなサウンドでも表現可能だと思います。

LFO
10種類の波形から選択して変調をすることも可能ですが、最大で8ステップのパターンを生成可能なSTEPモードが用意されていて、5つのLFOをそれぞれSTEPモードでコントロールすれば表現豊かなシーケンスパターンも作り上げる事が出来ます。

エンベロープ
DAHDSR方式のエンベロープを5基搭載しています。エンベロープをモジュレーションマトリクスで外部からコントロールしたり、リープさせて複雑なLFOのような使い方をすることが出来ます。

モジュレーション・マトリクス

HYDRASYNTH のモジュレーションマトリクスは、高解像度のOLEDディスプレイの見やすさ、情報量の多さによって、細かな部分までわかりやすく設定することが出来ます。

モジュレーションマトリクスの操作性はシンセサイザーによってそれぞれ異なりますが、HYDRASYNTH はとてもわかりやすく設定することが出来ます。もちろん、サウンドのエディットもこの画面を利用する事になるので、この価格帯でこのディスプレイやインターフェースの作りはよく考えられていると思います。

コントロール

オペレーション
HYDRASYNTHの高解像度OLEDスクリーンの情報量と高解像度のロータリーエンコーダー、8つのボタンで、シンセサイザーのエディットがわかりやすく直感的に操作することが出来ます。モジュールセレクトのボタンで各セクションが区別されているので、現在何をやっているか、ポジションがわかりやすいのも特徴の一つでしょう。

インターフェース
HYDRASYNSTH には、MIDIとUSB/MIDIインターフェース、CV/GATEまでもが搭載されています。最近のユーロラックなどのシンセサイザーやモジュールを、またモジュールからコントロールするのに、CV/GATEが付いているだけで変換の必要が無いので、とても便利だと思います。

とにかく音が良くて使いやすい

HYDRASYNTH Desktop

HYDRASYNTH は、音の良さも直感的な操作性のしやすさも最近の新しいシンセサイザーの中ではとても優秀だと感じます。ボイス数も8ボイスあれば十分ですが、2台をスタックする事で16ボイスに拡張することが出来たり、デスクトップ版に搭載されている24のPADは、アフタータッチセンシティブやスケールモードが搭載されているので、スペースが限られる場合にはラックマウントも可能なでデスクトップ版を選択するのも良いでしょう。

ソフトウェア
ASM が提供するソフトウェアをダウンロードしてPCと接続することで、ファームウェアのアップグレードやプリセットの管理が簡単にできるのも最近のシンセサイザーの特徴です。

Preset Manager
Firmwar Upgrade

デモ&レビュー映像

HYDRASYNTH の最大の特徴でもあるポリフォニック・アフタータッチのサウンドと演奏表現をデモ演奏で聴くことが出来ます。他のシンセサイザーのアフタータッチとの違いを確認して見て下さい。

販売情報

さらにおすすめ

moog minimoog

今回紹介するプロダクツは、アナログ・シンセサイザーの超定番”minimoog”です。私が初めて買ったシンセサイザーということもあり、思い入れのメッチャ強いプロダクツでございます。 minimoogはモーグ社が1971年に発売したアナログ回路による単音シンセサイザー。 minim...

IK Multimedia iRig Keys I/O

IK Multimediaから新しいコントローラー、iRig Keys I/O が発売されました。iRig Keys , iRig Keys Proに続き、iRig Keys I/O は、25Keyと49Keyの二種類がラインナップされています。名前からも十分...

Waldorf Largo

Waldorfと言えば、数々の個性的な素晴らしいシンセサイザーを世に送り出してきたドイツのシンセサイザーメーカーです。 ウェーブテーブル方式を採用したPPG WAVEシリーズやMicrowaveシリーズ、ヴァーチャルアナログとウェーブテーブル方式のハイブリッドで登場したQシリー...

YAMAHA MONTAGE ver3.5

YAMAHAのフラグッシップ・シンセサイザーMONTAGEのシステムがver 3.5にバージョンアップされました。最近のシンセサイザーは、システムのバージョンアップが行われることで新たなプリセットや波形などが追加されるのはもちろん、今まで無かった新しい機能が追加されたりするので、...

YAMAHA mx88

YAMAHAが新たに登場させたのは、88鍵のピアノ・シンセサイザー! いままで「mxシリーズ」と言えば49鍵と61鍵の「どこにでも運べるシンセサイザー」として軽量コンパクトで、YAMAHAのハイエンドシンセサイザー「motif」直系の高品位な音源、波形を搭載したシンセサイザーでし...

2009楽器フェアギター編

皆様御機嫌麗しゅう。永野啓司でございます。 今回はパシフィコ横浜にて開催された『2009楽器フェア』に行って参りました。二年に一度の祭典という事で、見どころが満載な訳ですが、全てを紹介するスペースもございませんので、私がギタリスト目線で見て回った中で気になった商品をいくつかご紹介...

もっと記事を見る

page top