2009楽器フェアギター編
- 2009/11/07
皆様御機嫌麗しゅう。永野啓司でございます。
今回はパシフィコ横浜にて開催された『2009楽器フェア』に行って参りました。二年に一度の祭典という事で、見どころが満載な訳ですが、全てを紹介するスペースもございませんので、私がギタリスト目線で見て回った中で気になった商品をいくつかご紹介させて頂こうかと思います。
まずはモリダイラ楽器のブースに展示されていたThe Moog Guitar。
あのMoogのギターですからね、どんなサウンドが出るのか非常に興味を惹かれます。
どうやら無限のサスティンを得られるという事で、更にはフィルターも内蔵しているというのですから、かなり面白いサウンドを構築出来る筈。と期待に胸を膨らませてアンプに繋がれて置いてあったギターを試奏してみたんですが、音が出ないのです・・・
手元のボリュームも付属のフットペダルもアンプもボリュームは上がっているんですが。何が原因なのかメーカーの方に質問しようかと思って周りを見回してもたまたまその時はメーカーの方が不在だった様で、結局生で音を聴く事は出来ませんでした。ん~残念。
が、残念で終わるのは悲しいので、帰宅後にネットでこのギターの動画を確認。私が受けた印象は「E-Bow内蔵ギター?」という感じでした。
あと、カタログによれば弾いていない弦をギターが勝手にミュートしてくれるらしいんですが、この辺りはやはり自分で弾いてみないと実感出来ない部分ですね。
フィルターの感じとかも含めて今後楽器店で見掛けたら是非試奏してみたいです。(販売価格が百万円近いので到底買えませんが・・・)
次に日本エレクトロ・ハーモニックスのブースにて紹介されていたMORPHEUS社のDROP TUNEという商品。
要するにピッチシフターなんですが、ピッチを上げる事は出来ません。ひたすら下げる事のみに使うエフェクターです。
半音単位で3音半まで下げる事が出来ますので、レギュラーチューニングの状態でローAまで出せてしまう訳です。(別にオクターバー機能もあり)使い方で真っ先に思い浮かぶのはやはりラウド系、スラッシュ系での使用でしょう。
所謂ダウンチューニングにした場合、非常に苦労するのがテンションの維持だと思います。いくら低い音が出てもベロベロのテンションでは切れのあるリフを弾くのは至難の業ですからね。
ましてや現在市販されているセット弦ではローAのダウンチューニングでテンションを保つなんていう事は無いものねだりもよいところです。
その点、このエフェクトを使えば自分好みのテンションを保ちつつ音を下げていけますから、ダウンチューニングを多用するギタリストには朗報だと言えますし、今までは物理的に難しかった音域まで使用可能になりますから、新たな可能性が広がりますね。
正直言って私はダウンチューニングを多用するギタリストではありませんが、このエフェクトはかなり気になっております。というのは、例えばライブでレギュラーチューニングと半音落ちのギターを両方用意しなければならないという様な事がたまにあるのです。
今まではそれぞれのチューニングのメインギター&スペアギター、という事で4本のギターを用意してライブに臨んだりしていたんですが、このエフェクトがあれば準備するギターも少なくて済むと。
ただし、気になるのはレイテンシーですね。メーカーの方の説明によれば全く気にならない程度の遅れとの事ですが、
こればっかりは自分で試してみないと実感出来ないですからね。残念ながら今回は試奏出来なかったので、今度機会があったら試してみようかと思います。
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次にローランドの新商品、JS-8です。
これ、ひと言で説明するのが難しいんですが、オーディオ・プレイヤーでありエフェクターであり、アンプシミュレーターであり、ギターアンプであり、オーディオ・インターフェイスでもあると。
メーカーの意図としては自分のお気に入りの曲を取り込み、それに合わせてギター演奏を楽しむという、ギタリスト向けオーディオ・プレイヤーとしての機能に重きを置いている様ですね。
同じ様な機能を持ったものは他メーカーでも今までにありましたが、このJS-8の特徴としてはスタンドアローンでの使用が可能という事でしょう。必要な時だけPCに繋いで、普段はエフェクト内蔵ギターアンプにオーディオ・プレイヤーが付いているという感覚で使えるのではないでしょうか。
個人的にはこの手のものはDAWソフトのプラグインとして使いたいと思ってしまうのですが、カタログを見る限りそういった事には触れていませんでしたので、そういう使い方は想定していないのかな?と思いつつ、一応メーカーの方に聞いてみましたら、ASIO対応でそういう使い方も出来るそうです。
その辺りを全面に押し出していないのは、やはりメーカーとしてはギタリスト向けオーディオ・プレイヤーというところで売っていきたいという事でしょうか。
価格も4万円前後という事ですので、一台持っていると中々重宝するのではないでしょうか。
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さて、次はちょっと変わり種を。VOXのブースに展示されていたアンプ内蔵バイクです。
ヤマハの原付バイク“VOX”とVOXアンプのコラボレーションとの事で、そういえばこのバイク、甲州街道沿いのヤマハで見た事がありました。音も聞いてみたいと思っていたんですが、ちょうどデモ演奏の時間に前を通りかかったんでかぶりつきで見てきました。
なんとこのバイク、足元のステップにはワウも付いているんですね。インストラクターの方も非常に気持ち良さそうに弾いておりましたよ。羨ましい。
こういったデモ演奏を聴けるのも楽器フェアならではの楽しみですね。
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私が見た中で最も盛り上がっていたのが、Caparisonのブースで行われたMattias“IA”Eklundhのクリニックですね。
回線チェックで会場に流れた超絶ギターサウンドに耳ざといお客さんがワラワラと集まって来まして、開始前から異常な熱気に。クリニック本番には凄い数のお客さんが集まりまして、その正確無比なタッピングや完璧にコントロールされたハーモニクス、アーミングプレイに酔いしれておりましたよ。
いや~、久しぶりに良いもの見せて頂きました。
で、そのマティアスモデルの新商品、フレットがかなり面白い事になっていました。
詳しい話は聞けなかったのですが、どのフレット上でも安定したピッチを保てる様に計算されているという事。
見たところフレットによって3弦が若干フラットする仕様の様です。バズ・フェイトン・チューニングシステムの様なものと考えれば良いでしょうか。これまた試奏は出来ませんでしたが、機会がありましたら是非試してみたいギターでした。
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最後に私が個人的に一番興味を惹かれた商品を。
DigidesignのEleven RACKです。
カタログによれば「ギター・レコーディング&エフェクト・プロセッシング・システム」という事でして、アンプシミュレーター的使い方はもちろんですが、エフェクト・プロセッサーとしてスタンドアローンでの使用が可能。
私が惹かれたのはこのスタンドアローンでの使用が可能というところ。つまり、宅録もライブもこのEleven RACK一台でこなせてしまうという事なんですね。
今までアンプシミュレーターをライブで使えないか、また逆に普段ライブで使っているセットを宅録で使えないかと色々と試してみましたが、どれも納得出来る音にはなりませんでした。
結果、私の中ではライブと宅録は全く違った音作りを余儀なくされていたんですが、このEleven RACK、その私の悩みを解決してくれるかも知れません。
デモ演奏はPro tools のプラグインとして作動させていましたが、スタンドアローンで使った音も聴いてみたかったですね。例えばEleven RACKからギターアンプのReturnに繋いで大音量で鳴らす、とかやってみたいですわ。
個人的にはスタンドアローンでの使用も含めて魅力を感じておりますが、アンプシミュレーター的な使い方だけで考えてもかなりクオリティの高い商品だと感じました。
という事で、駈け足でいくつかの商品を紹介してみましたが如何でしたでしょうか。
今後の皆様のギターライフの一助となれば幸いです。
著者: 永野啓司