IK Multimedia SYNTRONIK
- 2017/11/24
- English version is available!
ここに注目:
- 数々のビンテージ・アナログ・シンセサイザーの名機達を再現
- アナログ・オシレーターの挙動を再現したDRIFTテクノロジー
- アナログ回路をモデリングしたフィルター
- 実機には無い機能も充実
SYNTRONIKとはどのようなシンセサイザーか?
ビンテージ・アナログ・シンセサイザー。いまだに需要はありますが、状態の良いものを見つけるのはかなり困難です。ましてや、メンテナンスや故障した場合の修理のことを考えると余程の覚悟を持たない限り、所有・維持することはできないでしょう。
そこで、IK MultimediaはSampleTankやSampleMoogなどに代表される同社の先進サンプリング技術をもとに、状態の良い数々のアナログ・ビンテージ・シンセサイザー、ストリングス・マシンをマルチ・サンプリングして再現したバーチャル・インストゥルメントSYNTRONIKを発売しました。
SYNTRONIKは、単なるマルチ・サンプリングした今までのようなサンプラー音源ではなく、同社のモデリング技術により再現したビンテージ・フィルターを搭載して、サンプリング技術とモデリング技術を組み合わせたハイブリッドタイプのソフトウェアシンセサイザーを登場させたのです。
デモ&レビュー映像
デモ&レビュー映像では、SYNTRONIKの様々な機種のサウンドを紹介しています。もちろん、アルペジエーターやレイヤー&スプリット、エディットなどの簡単な使い方も説明しているので、是非ご覧下さい。
SYNTRONIKの音源方式とDRIFTテクノロジー
音源方式には、最良のコンディションからマルチサンプリングされたサンプル波形をベースに、各機種に最適化されたオシレーターの「揺らぎ」を再現するIK Multimedia独自のDRIFTテクノロジーを使ったエンジンが使われています。
当時、ハードウェアのアナログ・シンセサイザーは、アナログ機器であったことから、個体差や部品差、電圧の違い等により、ピッチが安定しなかったり、キーオンを繰り返す毎に微妙にピッチのズレを感じることがありました。今のデジタル時代のデジタル製品にこれは許されない品質ですが、逆にこの微妙なズレ、揺れがサウンドの厚みや個性となって、当時のアナログサウンドには欠かせない特徴でもありました。
IK Multimediaは、このアナログオシレーターの揺らぎの特徴を再現するDRIFTテクノロジーを開発し、SYNTRONIKに搭載しました。この技術により、キーオンを連続してもマシンガンのような単調な連続音にならず、1音、1音サンプルが発音される度に、位相、音色、ピッチなどを微妙に変化させる特徴を再現しました。ビデオでは、Andromedaのプリセット・サウンドでこれを確認しています。
モデリングされたビンテージ・フィルター
SYNTRONIKは、7つのフィルターを搭載しています。
フィルター・タイプで選択可能なフィルターは、ビンテージマシンのアナログ・フィルターを回路レベルのモデリングによって再現された4つのフィルターと、3つの特徴あるフィルターを搭載しています。ビデオでは、そのキャラクターの違いを切替えながらデモしているので、是非そちらでも確認してみて下さい。フィルタータイプの頭文字で判別出来る人は、なかなかの通です。
スロープも、6dB(1Pole), 12dB(2Pole), 18dB(3Pole), 24dB(4Pole)と用意され、モードもLP(Low-Pass), BP(Band-Pass), HP(Hogh-Pass), NOTCHと必要十分なフィルターのバリエーションが用意されています。
カットオフ、レゾナンスの効き具合は、各フィルターの特徴とキャラクターの違いがハッキリわかるので、モデリング技術の高さがわかります。どのタイプのフィルターも「あー、そうそう!」ってなる音の変化の感じが、触っていてとても楽しくなるフィルターです。
フィルター | フィルタータイプ |
---|---|
M-Type | トランジスター・ラダー・フィルター |
R-Type | IR3109チップ・フィルター |
C-Type | Curtis CEM3320チップ・フィルター |
O-Type | ステート・ヴァリアブル・フィルター |
PHASER | フェイズ・フィルター(マルチステージ) |
FORMANT | HumanVowel(人の母音)をエミュレートしたフィルター |
CLASSIC | SampleTankのIK VCF フィルター |
4パートのレイヤーとスプリットで重厚な組み合わせも自在
SYNTRONIKは、ビンテージ・シンセサイザー単体の再現に留まらず、4台までのレイヤー、スプリットによって、贅沢なアナログ・ビンテージ・サウンドのパフォーマンスを構築出来ます。
例えば、レイヤーでは
Oberheim OB-Xaの重厚なPADサウンドに、Yamaha SY-99のスペーシーなボイスPADを足し、Alesis Andromedaのキラキラベル音、この3つのサウンドをレイヤーする
スプリットでは、
右手のコード弾きは「Polymoogのサウンド+PPG Wave2.3のアタック音」
アルペジエーターには「Prophet5のシーケンス音」を…
左手はスプリットでベースには、もちろん「Minimoogのシンセベース」
など、このような贅沢なパフォーマンスのセッティングをマウスのドラッグで簡単に組むことが出来ます。
実機にはなかったアルペジエーターを搭載
当時、アルペジエーターは、ビンテージのシンセサイザーに搭載されていることは非常に希でした。Syntronikのアルペジエーターは、4つのレイヤーそれぞれに搭載しています。それぞれノートとコードをコントロールすることが可能で、4つのレイヤーを使った例では、
レイヤー1.キックパターン(アルペジエーター)
レイヤー2.ベースパターン(アルペジエーター)
レイヤー3.コードパターン(アルペジエーター)
レイヤー4.リード・手弾き用
このようにしてリズミックなパフォーマンス。パターンを作るなど、簡単にSyntronikをコントロールすることが出来ます。アルペジオ・パターンもビート毎にプリセットが用意されているので、すぐに使うことが出来ます。
リッチなサウンドに仕上がる高品位なエフェクター
IK Multimediaは、T-RacksやAmpliTubeなどの製品を見てもわかる通り、エフェクトやモデリングの技術、性能には定評があります。もちろんSYNTRONIKにもこの高品位なエフェクターが38種類も搭載され、これら高品位なエフェクターを5つのスロットに組み込み、サウンドメイクに活かすことで、更なるサウンドの幅や厚みを付け加えることが出来ます。また、このリアルな見た目もやる気にさせてくれます!
どのエフェクターも秀逸ですが、アナログシンセでは基本的な組み合わせだった、コーラス、ディレイ、リバーブ。このモジュレーション系と空間系のディレイ、リバーブが非常によく出来ているので、仕上がるサウンドがリッチなサウンドになります。お気に入りです。
モジュレーション系 | AM Modulation, Ensemble Chorus, Chorus C1, |
---|---|
ダイナミクス・EQ系 | Black 76, White 2A, Model 670, Parametric EQ, |
フィルター系 | LFO Filter, Env Filter, Multi Filter, Wah 47 |
ディストーション系 | Distortion, Crusher, Overdrive, Overscream, |
アンプ・モデル系 | Flexi Amp, Modern Tube Lead, |
リバーブ・ディレイ系 | Hall Reverb, Plate Reverb, Digital Delay, |
Syntronikに搭載されている数々の名機達
SYNTRONIKには、シンセサイザー、ストリングス合わせて、17種類のインスツルメントに38機種のビンテージマシンが搭載され、2000種類以上のプリセット・サウンドが含まれます。
それぞれのインスツルメントパネルは、名機達の「特徴あるカラーやツマミ」をもとに表現しているので、すぐに何のシンセサイザーなのかピンとくるはずです。
実際に触ったことのない機種を選択して音を出した瞬間、「こんな音が出たんだ!」と自分のコレクションになった気分で楽しみを感じました。音とビジュアルでその気にさせてくれるSYNTRONIK、とてもよく出来ています。
Minimod | Modular Moog, Minimoog Model D, Moog Voyager |
---|---|
OXa | Oberheim OB-X, OB-Xa |
J8 | Roland Jupiter-8, Jupiter6, Jupiter |
Pro-V | Sequencial Circuits Prophet-5, Prophet-10 |
V-80 | Yamaha CS-80, GX-1, CS-01II |
Harpy 260 | ARP 2600 |
T-03 | Roland TB-303 Bassline |
Blau | PPG Wave 2.3 |
Bully | Moog Taurus I, II, III |
Galaxy | Alesis Andromeda |
SAM | Oberheim SEM (Synthesizer Expander Module) |
String Box | ARP String Ensemble (Solina), Elka Rhapsody 490, |
Polymorph | Moog Polymoog, Opus 3, Rogue, Realistic Concertmate MG-1 |
99 | Yamaha SY-99 |
DCO-X | Roland JX-10, JX-8P, JX3P |
Noir | Multimoog, Micromoog, Moog Prodigy |
J-60 | Roland Juno-60 |
SYNTRONIKのエディットのしやすさの理由
SYNTRONIKのインストゥルメントは、機種ごとに特徴的なカラーとツマミが配置されたパネルが用意されています。そのパネルはツマミの形やパネルカラー、配置が違うので一瞬気付きませんが、実は全ての機種に共通の、シンセサイザーの音を作る基本的なパラメーターが設置されています。
下のパネルのパラメータを注意深く見て下さい。
ぱっと見では全く異なる機種で、ツマミやパラメータも違うように見えますが、実はレイアウトやカラー、選択の仕方やツマミの形状が違うだけで、全て共通したシンセサイザーのパラメーターが配置されているのです。どの機種を選択しても共通のパラメータでエディット操作ができる。これが、SYNTRONIKのエディットのしやすさに繋がっています。
OSC(オシレーター) | ・TUNE |
---|---|
FILTER | ・TYPE ー OFF・M-TYPE・R-TYPE・O-TYPE・ |
FILTER ENVELOPE | ・ATTACK |
AMPLITUDE ENVELOPE | ・ATTACK |
LFO | ・WAVEFORM |
CONTROLLERS | ・BEND |
Syntronikで音作り
SYNTRONIKには、それぞれのビンテージ・マシンごとにブラウザーのフィルターカテゴリーで「BASIC」というカテゴリーがあります。BASICカテゴリーには、そのマシンでサンプリングされた様々なパターンの「元波形」が入っています。上のキャプチャでは、Prophet-5のBASIC波形をカテゴリーで絞り込んで表示しています。
見てわかる通り、Prophet-5の波形やパルスワイズ幅、シンクした時の波形、デチューンさせた波形など、様々な波形パターンがサンプリングされていて、使えるようになっています。(ビデオでは、Roland Junoの波形で説明しています)
あらかじめプリセットとして作られたサウンドを使用してエディットすることも出来ますが、その元となった波形(BASIC波形)から音を作り始めることも出来るので、「JunoのPulese波形」を元に、Filterは本来の「Roland:R-TYPE」を使用せずに「Oberheim:O-TYPE」を使用して、サウンドの色づけを変える等の作り方が出来ます。
その組み合わせは、まさに膨大な数になり、そこがSYNTRONIKの楽しさで、リアルなシンセサイザーのパネルは、見ているだけでも「やる気」にさせてくれます!
SYNTRONIKを触ることで、過去に欲しかったマシンや、触ったことのないマシンに触れた気分になれるとともに、「こんな音がしてたのか・・・」と思うのは間違い無しです。
是非、デモ&レビュー映像で蘇ったビンテージシンセサイザーの数々のサウンドと機能を確認してみて下さい。