山内 ”Dr.” 隆義のドラムトラックレコーディング

ミュージックトラックでは、2010年7月15日 千葉県市川市にあるMCJスタジオにてギタリスト廣瀬昌明さんのソロプロジェクトアルバムのレコーディング模様をUSTREAMのmusictrackチャンネルを通じて生中継しました。

アーカイブ映像はこちら

こちらのアーカイブ映像にて、レコーディングの機材やセッティング、その模様がダダもれの映像でアーカイブされています。また、今回のレコーディング・エンジニア、山内”Dr.”隆義さんのインタビュー映像もあります。

これらの映像を少しでもご覧になってから、こちらの「リズムトラックのレコーディング」を読むことをオススメします。レコーディング当日のドラムトラックレコーディングについて、詳細を山内”Dr”隆義さんに説明して頂きました。

レコーディングスタジオについて

千葉県市川市 MCJスタジオ

今回のプロジェクトが『ドラムのダビング』がメインと言う事で、ナチュラルな響きのスタジオ、そして低域に”しまり”のあるスタジオを探した結果、MCJスタジオとなりました。

このスタジオは、リハーサルにも使用出来る広さがあり、なおかつ壁面の”木”と”鏡”のバランスが良く、適度なルーム感を持ち、ビルの一階にあるので床も非常にしっかりとしており、バスドラの音もとても”タイト”に収録出来るスタジオです。

又、コンソールにNeve 88RSが導入されており、シルキーかつパンチのある、いわゆる”ニーブトーン”が期待出来るスタジオです。

ドラムトラックレコーディングで使用した機材など

今回、ヘッドアンプ(マイクプリ)は持ち込みのNeve 4081を16ch使用しました。

Neve 4081

これは、ビンテージNeve#1081のリーシューのヘッドアンプで、とてもパンチがありクリアなサウンドなので気に入っています。

このヘッドアンプからコンソールのLine Inにリターンして、必要に応じて88RSのEQを使用しました。

Neve 88RSコンソール

また、アウトボードとしては、EQにOver Quality KE-922をKickとSnareに使用。

この後にビンテージのdbx 160VUでコンプレッションしてPro-Toolsに収録しました。

dbx 160VU

また、今回、Rupert Neve Designs Portico 5015HをAmbientのコンプレッションで使用してみました。とてもスムースで自然な音色のコンプレッサーでした。

Rupert Neve Designs Portico 5015H

ここからは各トラックで使用したマイク、アウトボードです。

Monoドラムトラック

  • マイク: ノイマンU-87i
  • インサート: UA 1176AE

Dr全体を一本のマイクで収録し、強めのコンプレッションでラウドな感じを出すのが目的。ヘッドアンプも通常よりも高く設定し、若干クリップさせている。

UAの1176AEにある”Slow ATT”を使用してアタックを残し、コンプレッションしています。

Universal Audio 1176 AE

Kick(421).トラック

  • マイク: ゼンハイザーMD-421 &, ノイマン U-47fet
  • インサート: Buss Out = Over Quority KE-922 - dbx-160VU

Kickの中にMD-421、ヘッドの響きをU-47fetにて収録。EQのフィルターで余計な超低域をCut、アタックである2〜3Khzを若干ブースト。EBassとぶつかりがちな200Hz近辺をピーキングでカット。

ゼンハイザーMD-421 &
ノイマン U-47fet

Kick(SKM100).トラック

  • マイク: YAMAHA SKM-100
  • インサート: Buss Out = Over Quority KE-922 - dbx-160VU

Kickの低域をとらえるための特殊なマイク。量感を出すために使用している。

Sna.トラック

  • マイク: Top-Bottom共にシュアー SM-57
  • インサート: Buss Out = Over Quority KE-922 - dbx-160VU
シュアー SM-57

打面とスナッピーをMIXしてKE-922で中低域を若干ブーストしてパンチを出し、dbxでアタックを強調。

Ex Sna.トラック

  • マイク: SE ELECTRONICS T2

スネアの打面と胴を狙ったマイク。通常はAKG C-414EBを使う事が多いのですが、今回はSE ELECTRONICS T2を使用。とてもファットなサウンドが録れました。

SE ELECTRONICS T2

Hat.トラック

  • マイク: AKG c-451

コンソールNeve 88RSのフィルターにて500Hz以下をカット。

AKG c-451

Tom(Hi).トラック

  • マイク: ゼンハイザー MD-421u4
ゼンハイザー MD-421u4

Tom(Low).トラック

  • マイク: ゼンハイザー MD-421u4

コンソールNeve 88RSのCompにてファーストアタック、スローリリースの設定で余韻を強調。さらにEQにてアタックを補強。


Top.トラック

  • マイク: AKG C-414EB

シンバルと言うより、Dr全体を狙ったマイキング。Drの鳴りと金物をとらえています。

AKG C-414EB

AMB.トラック

  • マイク: ノイマン U-87i
  • インサート: Rupert Neve Designs Portico 5015H

U-87iを3本立て、自然な広がりと明確なセンターを収録。L-C-RをMIXしてRupert Neve Designs Portico 5015Hにてコンプレッション。このトラックを聴けば、MCJスタジオの響きも判ると思います。

ノイマン U-87i

セッティングについて

今回のマイキングは、Drの収録に当たっては極めてスタンダートなセッティングです。楽曲やスタジオのルームアコースティックによっては、さらにルームマイクを立てる場合もあります。

Drの録音においてはマイクが沢山立つので、位相の問題には特に注意が必要です。

今回もKickにおける421,47さらにSKMにおいては理想の低音を狙うためにLittle Lab IBP(ハードウェア)を使用し、慎重に位相を合わています。

Little Lab IBPは、リアルタイムに聴感で位相をコントロール出来る優れもので、とても重宝しています。最近、私も福山雅治さんのレコーディングなどでも使用しましたが、UAD-2のプラグインでも発表されたので、MIX時に簡単に位相をコントロール出来て時間の短縮にもつながりました。

Little Lab IBP(プラグイン版)

コンソール

Neve 88RSは現代のNeveトーンを再現してくれるとても機能的なコンソールだと感じています。

今回は、インストの楽曲と言う事もあり、ヘッドアンプに#4081を使用する事により、クリーンでパンチのあるサウンドを狙いました。

ユーザーに一言

生のドラム録音には、多数のマイクが立ち、それぞれのマイクに音がかぶって来ます。そのかぶりを上手く利用し、音創りしてほしいと思います。

とかく、打ち込みに慣れているとオンマイクの音にこだわってしまいがちですが、ルーム感や、かぶりによる”楽器本来の鳴り”を感じてほしいと思います。

又、今回はナチュラルな音をそのままPro-Toolsに収録したので、その音に”味”を加えるべく、アナログ=テープのシミレーションをしたプラグインを試してみるのもいいと思います。

個人的にはUAD-2A-800は実機を知っているだけに”お見事!”って言う感じなので、そのような”見事な”プラグインでアナログを体験してみる事も勉強になるでしょう。

UniversalAudio UAD-2

UAD-2 Studer A800 Plugin
UAD-2 Neve 88RS Plugin
UAD-2 dbx(VCA VU) Plugin

ミックス段階

今回は残念ながらスケジュールの都合上、広瀬君のアルバムのミックスには参加できませんでした。
ドラムトラックのオーバーダビングというレコーディングに参加し、最終的にミックスまで参加した場合、これらのレコーディングされたトラックをミックスの段階で、積極的に音作りをする場合も多々あります。ただ、録りの段階から、方向性が定まっていれば、その必要は無くなります。

録った音をEQなりコンプすると、位相の問題や歪み、はたまたS/Nの悪化のリスクが加わります。

私はミックスにおけるEQ、Compは、あくまで”補正”程度にとどめておくべきだと考えています。

そのためにも、アーティスト、ミュージシャン、エンジニアが充分にコミュニケーションを取り、録音する楽曲をきちんと理解しておく事が大切です。

レコーディングと言う作業は、共同作業です。

単純に”音”を録音しているのではなくそのミュージッシャンの”気”や”情感”をも録音しているのです。

皆が作品に対して同じ方向を向いて出来上がった作品は、聴く人に感動を与える素晴らしい作品になると信じています。

ミュージックトラックより

以上、山内”Dr."隆義さんのドラムトラックレコーディングに於ける詳しい説明でした。

普段、打ち込み中心のアマチュアユーザーにとって、なかなか触れることの出来ない生のドラムセッティングやレシピ、エンジニアの立場からの意見、思いを存分に聞くことが出来たと思います。

このレビューを読んで、またUSTREAMの映像を見ると、また違った観点でその様子や雰囲気を感じ取ることが出来ると思います。

今回レコーディングした素材

今回のレコーディングで録音されたドラムトラックのオーディオファイルを、ミュージックトラックのプレミア登録をされているユーザーさんにダウンロードにて提供します。

これは、アーチスト、ミュージシャンの廣瀬さん、加藤さん、スタジオ・エンジニアの山内”Dr."隆義さんの好意により、提供して頂いたものです。こちらのドラムトラックの使用許諾は、廣瀬昌明さん、山内”Dr."隆義さん、加藤久幸さんよりミュージックトラックが使用の許諾を得ています。

プレミアユーザーの方は、ダウンロードのリンクから今回レコーディングされたドラムのマルチトラックのwav圧縮ファイルをダウンロードできますので、解凍後、ご自身の環境のDAWに立ち上げて再生をすることで、今回詳しく説明して頂いた各トラック素材そのままの音を体験できると思います。

ダウンロードは、ミュージックトラックにログイン後、「Myミュージック」の「プレミアムダウンロード」よりダウンロードすることが出来ます。

※一般の方は、ダウンロードを行うに際して会員登録とプレミア会員登録(現在無料)が必要になります。

※トラックの楽曲はUSTREAMで配信したレコーディングの模様の楽曲とは異なります。また、ファイルサイズの都合上、曲途中までのドラムマルチトラックになります。

トラックを再生するに当たって、山内さんからのコメント

各トラックのフェーダーを0(ゼロ)の位置に、一直線に並べた状態がスタジオでのモニター状態です。
それを考慮して、みなさんの理想のバランス、定位を工夫してみると面白いと思います。

レコーディングアーチスト情報

BRAINSOUT
ギタリスト 廣瀬昌明のソロ・プロジェクト。
Jazz,Fusion,Funk,AOR のミクスチャー・グルーブなインストバンド。
1stアルバム「idea」はiTunesのJazzチャートで3位に。

Masa Hirose
MySpace
masahirose's blog

今回レコーディングされたアルバムの情報


de sidere

ミュージックストア
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