Sequential Circuits Prophet 5
- 2008/08/11
オフィシャルレビューのビンテージシリーズ第一弾は、アナログシンセサイザーではその名を知らない人がいないほど名機中の名機であるSequential Circuits社のProphet-5です。
Prophet-5は、1978年にモノフォニック(単音)が主流のアナログシンセサイザーの時代に、ポリフォニック(和音)、作った音のパッチが40メモリー(後に120メモリ)という先進的なスペックを誇り登場し、瞬く間に世界的にヒットしました。とはいえ、その価格も日本製のモノフォニックのアナログシンセサイザーが10万円台、4音ポリフォニックのJUPITER-4が50万円前後の時代に、170万円という怒濤の価格です。
使う(購入する)ことが出来たのも、もちろんプロのアーチストが主流でした。Prophet-5を愛用した国内の代表的なアーチストとしては、やはりYMOが最も有名ではないでしょうか?海外の80年代のプロモーションビデオを見ても、映像の中にProphet-5の姿をたくさん見ることが出来ます。そして、今もなおその音に魅せられ、愛用するアーチストはたくさんいます。
Prophet-5には、Prophet5の2台分のスペックとポリシーケンサーを搭載したProphet10、木製鍵盤のProphetT8、廉価版のProphet600と、後に3つのモデルが登場します。モノフォニック(単音)仕様ですが、ProOneという製品も存在しました。
近年では、その名機をシミュレーションした製品がいくつか発売されています。ソフトウェアでは、NativeInstrumentsのPro53やArturia ProphetV。
ハードウェアでは、Creamware/PRO-12ASBなどがあります。これは、DSPによりProphet5をシミュレーションしたハードウェアです。
Creamware/PRO-12ASB
本家本元と言えば、Prophet5の開発者であるDaveSmithがProphet08をアナログシンセサイザーとして復活させましたね。
Prophet08
Prophet08はアナログシンセサイザーですが、現代でも使いやすいように安定性を考え、オシレータにDCOを採用しています。DCO(Didital Controled Oscrator)とは、VCO(Voltage Controled Oscrator)をデジタル的に安定化させたオシレータのことです。
Prophet5には大きく分けてRev1~3の3つのバージョンがあります。それらの違いは、安定性やフィルターのチップ、MIDIインターフェースの有無、パッチメモリの数などが挙げられます。Rev1は安定性が悪いと言われており、音とフィルターの切れが最も良いと言われているのが、Rev2だそうです。Rev3は、安定性とMIDIを兼ね備えた最終版で、流通した量が最も多いと言われています。
今回のレビューで使用しているProphet-5は、Rev3のMIDI搭載、120パッチプログラムのモデルで、状態がとても良い物でした。音を聴いていただければわかると思いますが、オシレータの安定性や音の状態も抜群です。
もともとこのProphet5と言う機器は、鍵盤の作りが独特で、針金により鍵盤の接点を持たせた鍵盤です。この鍵盤は、老朽化するほど接点不良が起きやすくなります。この状態にならないようにするには、絶えず接点が合わさるように弾くと言うことが大事な機器なのです。
ここで、改めてProphet5のスペックを紹介します。
- ボイス数 5Voices
- オシレータ 1ボイスあたり、2OSC(10OSC)
- 搭載波形 square/pulse/tri/saw
- フィルター 24db Lowpass filter
- プログラムメモリ数 40~120
ProphetはOberheimとよく比較されがちですが、どちらも独特な音のキャラクターがあり、MoogとArpの比較同様に、全く比較対象にならないほどの音の個性を持ち合わせています。その辺がPCM、デジタル主流の今のシンセサイザー達とは明らかに違う時代でした。
音はオシレータをシンクロさせた強力なシンクサウンドから、繊細なストリングス、ポリモジュレーションを使用した病的なSEまで、このパネルの作りからは想像が出来ないほど多彩な音造りが可能です。それも、この機種がヒットした要因の一つです。
それでは、Prophet5のパッチサウンドとともに映像をお届けします。
Prophet5の音は、YAMAHA MG16アナログミキサーに接続して、ミキサー内蔵のHALLリバーブを10%ほどかけています。原音を忠実にお届けするため、その他のエフェクト、EQなどは一切使用していません。
著者: 氏家 克典