Waldorf Largo
- 2010/01/25
Waldorfと言えば、数々の個性的な素晴らしいシンセサイザーを世に送り出してきたドイツのシンセサイザーメーカーです。
ウェーブテーブル方式を採用したPPG WAVEシリーズやMicrowaveシリーズ、ヴァーチャルアナログとウェーブテーブル方式のハイブリッドで登場したQシリーズ、3VCOのアナログシンセPULSEなど、他のシンセサイザーメーカーとは違ったアプローチで、マニアを唸らせるようなシンセサイザーを製造してきました。
ソフトウェア版では、WaldorfEditionとしてPPGWave2Vや、シンセパーカッシブ音源のAttackがシミュレーションされ、現在でも発売されています。
そんなWaldorfが最新のソフトウェアシンセサイザーとして世に送り出したのが、今回紹介するLargoです。
Largoは、WaldorfのDNAであるヴァーチャルアナログとウェーブテーブル方式を採用したソフトウェアシンセサイザーです。早速、そのポテンシャルを見てみましょう!
オーバービュー
まずは、全体のレイアウトから。
※デモ映像ではVer1.1を紹介しています。2010.01現在の最新バージョンはVer1.5のため、オフィシャルレビューでは、そちらのキャプチャで紹介しています。
一見すると複雑なツマミが多く並んでいるように見えるのですが、実はmusictrackのオリジナルソフトシンセサイザーであるMT-1EXととてもよく似たレイアウトになっています。
操作性を考えると、やはり左から右そして下に信号が流れていくような、自然なレイアウトになるのでしょう。よく見てみると、MT-1EXを理解している人には馴染みやすかもしれません。
やはり、どんな優れたシンセサイザーでも操作性を損なってはせっかくのスペックを生かし切れなかったり、途中でその楽しさが半減してしまうので、その点はこのLargo、良くできています!
オシレータ
シンセサイザーの音の発信部分であるオシレーターを見てみましょう。
オシレータ部分の左上には【1】と番号が振られていますが、このオシレーターを3基も搭載しています。
また、オシレータ1と2には、サブオシレーターも搭載していて、実質5オシレータ分のスペックです。(オシレータ3のみ、ウェーブテーブルとサブオシレータを搭載していません)
オシレータの操作部分には、Octave,Semitone,Detuneなどのピッチ、オシレータの波形、FM(フリクェンシーモジュレーション)、オシレータ(波形)変調用のモジュレーション、サブオシレータなど、その他細かなパラメータを備え、他のシンセサイザーとはオシレータのバリエーションがかなり充実しています。
もちろん、キャプチャで見られる波形は「Saw」が選択されていますが、Alt1とAlt2という波形が用意されていて、これはQシリーズに搭載されていた、0~127まで128種類の波形が連続して格納されたウェーブテーブル2種類になっています。
もっとスゴイのは、Alt1とAlt2以外に、往年のWAVE、microwaveシリーズで搭載していたウェーブテーブルまでも搭載しているのです。
まさに、Waldorfのシンセサイザーの集大成です!
オシレータだけをみてもこれだけの高スペック。音のバリエーションが豊富になることは、言うまでもありませんね。
ちなみに、ウェーブテーブルは、ワンショット的にAlt1,2の0~127から1つの波形を選択してもいいですし、microwaveシリーズなどのウェーブテーブルから選択しても構わないと思いますが、一番の特徴は、ウェーブテーブルの波形のスタートポイントからエンドポイントまでの再生をエンベロープやLFOで変調して、波形モーフィングサウンドを作ることでしょう。
波形が時間軸と共に変化していくサウンドは、このウェーブテーブル方式のシンセサイザーの最も代表的な特徴です。映像でその点を詳しく説明しているので、サウンドと共に要チェック!
フィルター
Largoは、フィルターがまたゴージャスなんです!
オーソドックスなシンセサイザーは、LowPass,HighPass,BandPassなどが搭載されていますが、Largoは何と・・・
Low Pass 24 dB / 12 dBBand Pass 24 dB / 12 dBHigh Pass 24 dB / 12 dBNotch 24 dB / 12 dBComb Filter with positive / negative Feedback
これだけの種類のフィルターを搭載しています。ソフトウェアとは言え、なかなかこれだけのフィルターを搭載しているシンセは数少ないです!
なんと、このフィルターを2基も。それぞれ、並列や直列に並べることも出来、ここから加工される音のバリエーションは、ちょっと想像できないですね。
エンベロープ
エンベロープは、右下の段のページタブに配置されていて、4つのエンベロープと、4種類のエンベロープパターンが用意されています。これも、普通のノコギリ波など波形を時間軸でコントロールしてもあまり大きな変化が望めないことから、ウェーブテーブルをコントロールするためのエンベロープバリエーションであることは言うまでもないですね。
ADSRADS1DS2R (2 Decay/Sustain stages plus adjustable Attack Level)One ShotLoop S1S2 (Loop between Sustain 1 and 2)
ちなみに、ウェーブテーブル波形の変調は、オシレーターセクションで変調先をエンベロープの例えば3などにして、エンベロープ3を時間軸に沿って減衰させたりループさせることですぐに波形のモーフィングサウンドが作れます。
操作して感じたことは、とにかくAtackとDecayの切れがいい!なかなかこのようなパーカッシブな音や、立ち上がりの速いエンベロープはソフトシンセの中では見られないです。
LFO
LFOも普通のビブラートなどのオシレータ変調以外に、ウェーブテーブルの波形を変調できるよう、3つのLFOを搭載しています。
その他
その他、エフェクトやアルペジエーター、強烈なオシレーターのユニゾン、モジュレーションのマトリクスなど、このlargoにはシンセサイザーの機能として考え得る数々のパラメーターを網羅しています。
エフェクトは、2系統用意されていて、1系統はモジュレーション系、2系統は空間系のエフェクトが用意されています。
アルペジエーターも視覚的にエディットすることが可能。パターンも、グラフィカルに設定できるのでオリジナルパターンが簡単に作れます。
これだけのスペックがありながら、かなりコストパフォーマンスが高い!
最新のVer1.5からは、プリセットの選択がしやすいように、プリセットブラウザが搭載されました。これもお気に入りのサウンドにアクセスするにはとっても便利な機能です。(Ver1.1では、プルダウンで選択してました)
バージョンアップで機能もアップする!他にもバージョンアップされた部分がたくさんありますが、こういうところがソフトシンセサイザーのいい所ですね。
多彩なサウンド
Waldorf往年のシンセサイザーのシミュレーションとして使うも良し、新たな可能性を秘めたゴージャスサウンドを追求するも良し。とにかくこのLargoは、ソフトシンセサイザーの中でも高スペックな製品であることは間違いないです。
サウンドもブッといシンセベース、リード、分厚いシンセパッド、アンビエントなどで使える波形モーフィング、過激なSE効果音など、テクノからダンス、ポップス、アンビエントなど幅広い音楽に対応できるサウンド、プリセットも最大の魅力です。
もう一点、Largoはソフトウェアで再現可能なWaldorfのシンセサイザーですが、ハードウェアではblofeldがこれまた同じようにWaldorfの伝統的なサウンドを再現するハードウェアのシンセサイザーです。blofeldは、ハードウェアの特徴を十二分に活かし、PCではオーディオI/Fに任せているデジタル・アナログ変換やプリアンプ部分を専用のハードウェアで担っているので、より太いサウンドを再現できるんですね。
デモ映像
映像ではオシレーターのユニゾンを使って簡単にトランス系のサウンドを作ったり、ウェーブテーブルの特徴、プリセットサウンドを紹介してます。
是非、Largoのパフォーマンスは映像でチェックすべし!
■オフィシャルレビューHD版について
ミュージックトラックのオフィシャルレビューHD版では、映像はPanasonicのLumixのGH1を使用してハイビジョン映像を記録し、音声はマルチトラックでZOOMのR16を使用してデジタルレコーディングを行い、それぞれの素材をもとに映像編集しています。
著者: 氏家 克典