Arturia minimoog V2.0
- 2010/04/12
アートリアのminimoog Vがバージョン2.0になって登場!シンセ好きは絶対避けて通れないビンテージ・アナログシンセの銘機中の銘機minimoogを完全ソフトウエア化し、あのモーグ博士も認めたその実力はどう進化したのか!?
まずは実機を見てみましょう。
これは、アートリアが開発時の解析用に使用していたminimoogです。よ~く見ると、minimoog V 2.0と木目が一緒でしょ?
では、改めてminimoog V 2.0を見てみましょう。
見た目が大事!
どうです?見た目、本物と一緒でしょ?
この見た目は実際の使用感として、とても大事です。やる気にさせる、そんな匂いがプンプンしますね。当然音は、ベース、リード、ブラス、パッド…度肝を抜かれるくらいスゴい王道のmoogサウンドです。
唯一本物にはない部分が上部パネル部分。ここはフロントパネルをオープンすると現れます。
左側に、V2になって加わった「MOTION RECORDER(モーション・レコーダー)」と「VOCAL FILTER(ボーカル・フィルター)」、右側には前バージョンから引き継いだ「MODULATION MATRIX(モジュレーション・マトリックス)」とLFO、ARPEGGIATOR(アルペジエイター)、エフェクトのCHORUS(コーラス)、DELAY(ディレイ)があります。
フロントパネルのレイアウトは、シンセサイザーの基礎そのもの。左から右に信号が流れる状況を表しています。
OSCILLATOR BANK(オシレーター・バンク)には3つのオシレーター(発振器)があり、実機と同様、オシレーター3はLFO(低周波発振器)として機能します。中央のMIXERエリアでノイズは外部入力を含めたミキシングをし、MODIFIER(モディファイア・・・FILER(フィルター)や時間的変化をつけるエンベロープ)を経由してOUTPUT(出力)という流れです。
尚、実機で電源スイッチに当たる部分はSOFT CLIPPING(ソフト・クリッピング)といって回路上の歪みが再現されます。実はこの部分がmoogサウンドのウォームでファットな音の秘密を醸し出していてminimoog V 2.0では効果バツグンです。CPUパワーに余裕のある方は常時ONにすべし!
V2は、ここが強力に進化した!
このようにminimoogを完全再現という基本コンセプトはそのままに、V2として進化した機能を見てみましょう。
MOTION RECORDER(モーション・レコーダー)
4つ(赤、緑、青、白)の変調を同時に扱え、その変調を自在に描くことができます。変調先はオシレーター、フィルター、LFOなど自由自在。
グラフの部分をクリックすると、この画面が現れます。
ペンや消しゴムなどのツールでここに自由に線を描きます。
4つまでの変調が同時に動かせるので、複雑な音色変化を簡単に生成可能です。
VOCAL FILTER(ボーカル・フィルター)
見ての通り、A(ア)、I(イ)、U(ウ)、E(エ)、O(オ)のボイス系のフィルターをかけることができます。下部にLFOのつまみがありますが、A、I、U、E、Oの位置を設定した速さで巡回させることもできるので、動きのあるボイス系のリードやパッドサウンドに効果絶大です。
SOUND MAP(サウンド・マップ)
このサウンド・マップ機能はとてもユニークです。
SOUND MAPボタンを押すと下記画面が別ウインドウで現れます。
音色ごとにカテゴリー分類されたプリセットが色分けされたアイコンの状態で散りばめられています。マッピング自体に特別な意味合いはなく、カテゴリーごとの配置分布になっているようです。
もちろんここでアイコンをクリックすることで音色を選択できますが、ドラッグしながら動かすことにより、マッピング周辺にある音色群から新たな新規音色を作成することが可能です。マウスの周辺にある音色がブレンドされる感じですね。ここで生成された音色は、もちろんセーブ可能。パネル操作なしでどんどん新規音色が生成されます。これはホント楽しい!
さらに4つの音色をスナップショットとして登録し、その4音色間でモーフィング(音色間で切れ目なく滑らかに変化すること)することも可能です。
マウスをドラッグすることで上記のように赤い線が現れ、4音色間でモーフィングします。
この時、フロントパネルの全つまみが一斉に動く様と生成される音色のインパクトは感動的。ここでも生成された新規音色はセーブ可能です。
厳選プリセット音色レビュー
Minimoog V 2.0では、BANKとしてプリセットを作ったプログラマー名、SUB BANKで音色カテゴリー、PRESETで音色名が表記されます。またBANKをALLにセットすると、SUB BANKで選択された音色カテゴリー内のすべての音色がPRESETに現れます。目的の音色にたどり着きやすい、よく考えられた音色検索機能と言えます。
では、いくつかのプリセット音色を見てみましょう。
■K.U_3osc
私が作った3つのVCOを3オクターブにセットして微妙にチューニングをずらして厚みをだしたminimoogならではの太いシンセベースです。おかげさまで評価が高くminimoog V 2.0の起動時にこの音色が選択されます。
■KPR_Fat_ELP_Bass
エマーソン・レイク&パーマーのアルバム「恐怖の頭脳改革」の“悪の教典9第1印象”にて聞くことができるシンセベースの音色。トラック内の音と寸分違わない素晴らしいプログラミング。
■K.U_Gentle
これも私が作った独特の広がり感のあるシンセパッド(もちろん和音演奏可)。モジュレーション・マトリックスを駆使して片方のオシレーターにピッチEGをかけ、アタック時の不安定さを演出している。
■GD_Lead5
ASIAのキーボーディスト、ジェフリー・ダウンズ氏によるシンセリード音色。ASIAの曲を彷彿とさせる絶妙なポルタメント感といい、曲中でも絶対埋もれない存在感あるアナログサウンドです。
■KS_Morph_wheel2
タンジェリン・ドリームのクラウス・シュルツ氏によるアルペジオ音色。Minimoog V 2.0に搭載されたアルペジエイター駆使しモジュレーション・ホイールによって音色が劇的に変化していく。ミニマル・ミュージック好きにはたまらない秀逸音色。
■JMB_Male_Chords
Minimoog V 2.0の新機能「VOCAL FILTER」を駆使して作られたクワイア音色。A(ア)の位置にセットされており、見事に「アー」という男声になっている。プログラマーのジャン・ミッシェル・ブランチェは、アートリアの超優秀な専属プログラマー。
■MM_Motion_Pad
Minimoog V 2.0の新機能「MOTION RECORDER」を駆使して作られたパッド音色。フィルター(カットオフ、レゾナンス)やパンを複雑に変調させ、見事な新規音色に仕上がっている
■JMB_Alienized
Minimoog V 2.0の新機能「VOCAL FILTER」と「MOTION RECORDER」が複雑に絡み合いモンゴリアン・ボイスのような声と複雑な変調が次々に音色を変化させていくサウンドエフェクト。
全体の印象
私自身、アートリアとは長い付き合いで、このminimoog V 2.0も企画の段階から携わり、プリセット音色制作やマニュアル制作なども担当しました。このminimoog V 2.0になって、信じられないほどの素晴らしい進化を遂げたと思います。
以前のバージョンと比較してもプログラムの最適化を高い次元で行ったようで、CPU負荷も軽減されつつ、音により深みがでて往年のモーグサウンドに磨きがかかりました。
また、以前はインストール時にしか選べなかった木の材質も、Skinとしていつでも選択可能です。ちなみに、以下の3種類から選択可能。
Light(メイプル)
Medium(ウォールナット)
Dark(マホガニー)
ちなみに、私の好みは、自分が所有しているminimoogと一緒のウォールナットやね。
そうそう、便利になった進化として、このminimoog V 2.0は専用ドングルによるコピープロテクトではなく、Syncrosoft社のLisence Control Centerによるインターネットでのオーソライズとなりました。(もちろんドングルを持っている方は、ライセンスの移動も可能)
minimoog V 2.0は、その再現性、新規性、操作性、音の良さと4拍子揃ったソフトシンセの決定版といえるでしょう。以前のバージョンを所有している方は、すぐにバージョンアップ(無償)を!!
まだ、持っていないあなた!このminimoog V 2.0がビンテージ系ソフトシンセの定番中の定番です。間違いなくあなたの重要なパートナーとなることでしょう。
ムービーでは、ミニモーグの実機(私の私物ね)と比較しながら紹介しています。まず、違いは判別できないでしょうね。それくらい優秀なエミュレーションであることが一目瞭然です!!
製品名: minimoog V 2.0
メーカー希望小売価格: 31,290円(税別本体価格:29,800円)
開発元:ARTURIA社(アートリア社:フランス)
輸入代理店:株式会社フックアップ
minimoog V2
参考価格:¥ 31,290
価格:¥ 22,680 配送料無料
OFF:¥ 8,610 (28%)
オフィシャルレビューHD版について
ミュージックトラックのオフィシャルレビューHD版では、映像はPanasonicのLumixのGH1を使用してハイビジョン映像を記録し、音声はマルチトラックでZOOM のR16を使用してデジタルレコーディングを行い、それぞれの素材をもとに映像編集しています。
著者: 氏家 克典