YAMAHA CP5

YAMAHA CP5は、ヤマハのエレクトリック・ピアノ・シリーズの集大成ともいえる新CPシリーズの中堅モデル。この新CPシリーズは、新開発のSCM音源や新CPシリーズ専用に開発されたNW-STAGE木製鍵盤(CP50はグレードハンマー鍵盤)、充実のマスター機能など現代のステージ・ピアノに求められる先進の性能が盛り込まれています。

CPシリーズは以下のモデルがラインナップされています。

CP1: 新開発のSCM音源による楽器本来の個性を再現するピアノサウンド。表現力と弾き心地にこだわったCPシリーズのトップ・モデル。¥525,000
CP5: CP1同等のSCM音源システムに加え、多彩な音色とエフェクトをも併せて装備。ステージ演奏の可能性を広げるハイパフォーマンスモデル。¥288,750
CP50: プロをも満たす、SCM音源搭載の高品位なピアノサウンドをもっと身近に。気軽に持ち運べるサイズとウエイトも魅力のコンパクトモデル。¥198,450

では、充実した性能/抜群のサウンド・クオリティ/多彩な音色の3拍子がバランスよく盛り込まれている、私の超オススメ“CP5”をレビューしましょう。でもその前に歴代のヤマハ・ステージピアノをチェック!

ヤマハ・ステージピアノの歴史

ヤマハのステージ・ピアノといえば、最も有名なのは1976年に登場した初代のエレクトリック・グランドCP-70/80。ローズ・ピアノが大全盛だった当時のキーボード・シーンに、グランド・ピアノと全く同じ打弦構造で各弦をピックアップで増幅したそのブライトでダイナミックなサウンドは一世を風靡し、現代でも小林武史、ピーター・ガブリエル、U2等の愛用者が多数いる。1985年にはMIDI付のCP-70M/80Mも登場した。

CP-80(当時の価格;¥743,000)

同じく1976年にアナログ音源のCP-30も登場した。タブレットで音色を組み合わせる2系統の音源で、マイルドな音からクラビのような音まで守備範囲が広かった。ホール&オーツの「One on One」の8分フレーズが有名。

CP30(当時の価格;¥285,000)

1983年に登場したのがFM音源を搭載したモデルのPF15。GS1で有名だったTOTOのエレピサウンド、ピアノ・タッチ、ステレオ・スピーカーを搭載していた。まだMIDIは非搭載だった。

PF15(当時の価格;¥220,000)

サンプリング技術が搭載されピアノの音色が飛躍的に向上したモデルがPF80(1985年)。ピアノ系はサンプリング、エレピ系はFM音源のハイブリッドだった。ヤマハでMIDIが搭載された初めてのステージ・ピアノ。

PF80(当時の価格;¥198,000)

DX7IIの音色をカートリッジ経由で再現できたFM音源に特化したPF2000(1988年)。シーケンサーも搭載し、シンセサイザーとの親和性とデザインが特長的なピアノタッチのエレピだった。

PF2000(当時の価格;¥209,800)

その後、サンプリング技術が劇的に進化し、ステージ・ピアノのフラッグシップとして1993年に登場したのがP-500だ。アコピ、ローズ、ウーリッツアー、DXエレピ等11種類のピアノサウンドとAE鍵盤を搭載したプロ仕様のステージ・ピアノだった。

P-500(当時の価格;¥750,000)

2002年に登場したP-250は、グレードハンマー鍵盤と充実の高品位なピアノサウンド、XG音源の搭載など、プロ用ステージ・ピアノとして定番となったモデルだった。その後、2006年にピアノ・サウンドを大幅にグレードアップし、CP300として数々の新機能とともにリニューアル登場した。

P-250(当時の価格;¥248,000)

CP5の特長

音源は、SCM(スペクトラル・コンポーネント・モデリング)テクノロジーによるモデリング技術と超高品位なサンプリング技術が融合しており、楽器ごとに発音方式が確立化されている。

アコースティック・ピアノでは、CFIIISとS6Bの2種類のヤマハ・グランドピアノ、エレクトリック・ピアノでは、ローズmark1(71、73、75年製)、ローズmarkII(78年製、ダイノマイ)、ウーリッツアー(69年製、77年製)、CP80、DXエレピなど17種類のピアノ系サウンドが搭載されている。

弾いてみてビックリするのが、サウンドのリアリティと音色変化の滑らかさ。特にCPやローズ、ウーリッツアーで弾いてみると、ベロシティ(鍵盤タッチ)に於ける音色の継ぎ目が全くない!!

MIDIで制御出来る127段階が、本物の楽器と同様の滑らかな変化をする。また、象牙鍵盤を弾いているかのように錯覚してしまうほどの木製NW-STAGE鍵盤も相まって、プレイヤーにとって気持ちいい事この上ない!
ぜひお近くの楽器店での試奏をおススメします!!

さてパネルを見てみましょう。

右サイドにはマイク入力、外部オーディオやドラム・パターン用トラック、LEFT1,2/RIGHT1,2それぞれにボリュームとON/OFFボタンがあります。CP5では、鍵盤/MIDI入力でLEFT1,2/RIGHT1,2の4系統で内蔵音源を制御でき、レイヤーやスプリットが自在に設定可能。

CP5ではプリアンプ、モジュレーション・エフェクト、パワーアンプの流れで各音色を設定可能だ。
ハンマーの硬さ、打弦ポイントなどSCMテクノロジーならではの調整が可能。
面白いのはエフェクターで、MXRのPhase90やスモールストーンのバイ・フェイズ等の有名ビンテージ・エフェクターを完全再現しているところ。これはもの凄いこだわりです。

もちろんシーケンサーも搭載している。USBメモリーに直接WAVEファイルを録音することも可能。

暗いステージでも見やすいディスプレイと3つの大型ノブ

サウンドの選択は、プリセット、ユーザー、外部USBにそれぞれA、B、C、Dのバンクがあり、それぞれのバンクに1〜10のセレクションがある。機能的にとても分かりやすい構成だ。

右サイドにはトランスポーズ、マスター・コンプレッサー、5バンドのマスター・イコライザーがある。

さらに右端にはUSBメモリー用のスロットも用意されている。

私、氏家のおススメピアノ・サウンドはコレ!

アコピはCFのきらびやかな響きもいいが、S6の力強いサウンドにやられました。木の質感やハンマーの打弦感の次元が違う!いいモニターの前で弾くと、目の前のグランドピアノの存在感に驚きます。

エレピでは、71年製のフェンダーローズmark1と78年製のローズmarkII。71年製はデオダートの「ツァラトゥストラはかく語りき」、78年製はジョーサンプル(クルセイダーズ)のアルバム「Scratch」や、リチャードティー(スタッフ)の「My Sweetness」(もちろんエフェクターは必須)、69年製のウーリッツアーでは、カーペンターズの「Top of the World」と、その時代感も含めて全く同じサウンドになりますね。

特に私自身、78年製のローズmarkIIを所有していたので、そのサウンドと弾き心地には相当の思い入れがあります。

映像でCP5のスゴさをチェックすべし!

これ以外にも、CP5には305種類もの音色が搭載されていたり、ドラム・パターンを使用してパフォーマンスを組めたりと、上位機種であるCP1にない機能まで網羅され、音楽制作の上でも非常にバランスのとれたプロダクツです。

ステージ・ピアノというジャンルに分類されていますが、音楽制作環境に於けるマスターキーボードとしても、かなり重宝するでしょう。

音色編

機能編

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