Behringer DeepMind12
- 2017/09/13
- English version is available!
ここに注目:
- 12ボイスの本格的なアナログ・ポリフォニック・シンセサイザー
- エディットしやすいスライダーとパネルレイアウト
- ハイエンドメーカー直系、本格的なエフェクター搭載
- Wi-Fi内蔵でタブレット端末から本格なエディットとコントロールが可能
- とにかく高機能、高性能なのに価格控えめ
コストパフォーマンスが高いさまざまな音響製品を世に送り出してきたbehringerから、初のシンセサイザー、それもいきなり本格的な12ボイス、リアルなアナログのポリフォニック・シンセサイザーが登場しました!
アナログ方式のシンセサイザーが密かにブームな現在、12音ポリフォニックで投入されたシンセサイザーのサウンドと機能を紹介します。
12音ポリフォニックのシンセサイザーであるという事
ここ最近のアナログシンセサイザーの流行によって、さまざまなタイプのシンセサイザーが発売されています。
- ユーロラック・モジュラー系
Euqorack、Doepfer、AnalogueSystems・・・ - ガジェット・ボックス系
KORG monotoron、volkaシリーズ、DSI morpho・・・ - 復刻、クローン系
moog、ARP、MS20mini・・・ - 新型系
monologue、Novation PEAK・・・
大きく分けると、こんな感じでしょうか。
今回、behringerが初めて作り上げ、世に出してきたアナログシンセサイザーは、もちろん「新型系」に入ります。スペック的にも後発ながら、他の先発機種をも凌駕する高機能で、なおかつスペックの割には低価格なシンセサイザーとして発売されました。また、今までモノボイス(単音もしくは、デュオボイス)、4音ポリフォニックあたりが一つ下の価格帯の主要なスペックでしたが、このBehringer DeepMind12は、いきなり12ボイスという今までのアナログシンセサイザーの歴史の中でも希なポリフォニック・ボイス数で、かつ、驚く程の価格設定で登場しました。
12ボイスは通常のシンセサイザープレイでは十分すぎるポリ発音数ですが、リッチなスプリット・パフォーマンスや演奏、レイヤーのよるサウンドの厚みにおいて、大きな威力を発揮します。
12ボイス装備のメリット
- ピアノなどキーボード系サウンドの演奏(音が途中で途切れない)
- スプリットで多彩なサウンドをアサインして演奏のアンサンブルの幅を広げられる(両手で異なるサウンドを演奏)
- レイヤーでサウンドを重ね合わせ、重厚なレイヤーサウンドを作れる(ピアノサウンドとパッドサウンドのレイヤーなど)
- 12ボイスをユニゾン・ポリフォニーでアサインして、今までにない重厚なサウンドを作れる(複数のボイスをユニゾン・デチューンさせた強力、凶悪なベースやシンクサウンドなど)
ボイス数が多いと言うことは、これだけの余裕とメリットが出てくるので、今までにないサウンドを作り上げたり、作れる音の幅が一気に広がります。デモ&レビュー映像では、さまざまなプリセットを紹介しているので、その強力なサウンドを是非、聴いてみてください。
デモ&レビュー映像
パネルレイアウト
DeepMind12のパネルは、往年のROLAND JUNOー106に似た縦型スライダー、左から右に信号が流れるような仕組みで、非常にわかりやすいパネルレイアウトになっています。
また、各セクションには「EDIT」ボタンが用意されていて、これを押すことでディスプレイに詳細なエディットパラメータを表示させることが出来ます。これは、VIRUSシリーズを思わせるクイックなパラメータアクセスの方法で、本体だけでも大量なパラメータをすぐにエディットできるこの仕組みは、よく考えて作られていると思います。
アルペジエータ/シーケンサー セクション
最近となってはすでに定番のアルペジエータはもちろん装備しています。アルペジオ・モードも10種類以上、パターンも用意され、MIDIクロックによるテンポの同期も可能になっています。このテンポとゲートタイムは、スライダーで簡単にコントロールすることが出来ます。
シーケンサーはコントロール可能な32ステップシーケンサーで、もちろんピッチを動かす通常のステップシーケンサーとしても使えますが、この32ステップの「コントロール・シーケンサー」は、モジュレーションマトリクスの「ソース」にアサインすることが出来るので、フィルターのカットオフをデスティネーションにアサインすれば、フィルターのカットオフの開き具合を制御したシンセサウンド作るなど、音作りの幅が一気に広がると思います。
その他、
- コードメモリー「CHORD」
- コードメモリーを複数の鍵盤にアサインして再生可能なポリコード「POLY CHORD」
- リアルタイムテンポ設定のタップスイッチ、音をホールドする「TAP/HOLD」
- 詳細なエディットパラメータをセンターディスプレイに表示する「EDIT」
LFO セクション
2基の独立したLFOを装備しています。波形も一般的なLFOで用意されている波形以外に、S&H(サンプル&ホールド)、S&G(サンプル&グライド)など、7種類の波形が用意されていて、同期はもちろん、詳細エディットでは、より複雑なパラメータを調節をすることが出来る高機能なLFOになっています。
DCO1&DCO2 セクション
オシレーター
オシレーターの安定性を重視したのDCO(Digital Controlled Oscillator)を採用しています。最近のアナログのポリフォニックシンセのオシレーターは特に安定性が求められるので、DCOを採用することが主流になっています。
Dave Smith InstrumentsのProphet08やOberheimOB-6でもDCOを使用しているように、和音を鳴らせるシンセサイザーのピッチの安定性を考えたら、選択肢はDCOとなるのでしょう。各ボイスに2つのオシレータを搭載しているので、DeepMind12は、24のオシレータを装備していることになります。
波形
OSC1:ノコギリ波、パルス波(Pulse width)
OSC2:パルス波
NOISE:PINK NOISE
一見少ないかに見える波形の種類ですが、パルスワイズ幅の調整、DCO1とDCO2のそれぞれの波形の掛け合わせや、独立したそれぞれのピッチによる倍音生成、DCO2に用意された「TONE MOD」というパラメータを使って倍音をコントロールすることが出来るので、意外にも複雑な波形を作り出すことが出来ます。もちろん、オシレーターシンクも用意されています。
センターディスプレイとコントロール セクション
ディスプレイとノブ
視認性の良い大型ディスプレイにグラフィカルなパラメータや数値、操作しやすいプッシュ付きノブのダイアル、データエントリースライダーなど、様々なパラメータにアクセスして、本体でのエディットを可能にするインターフェースになっています。
POLY【UNISON DETUNE】
Unison modes (1,2,3,4,6,12 voice)
12ボイスを最大限に活かすことが出来るよう、多彩なユニゾンモードを持っています。ユニゾンモードを選択すれば、デチューンスライダーによって各ボイスのデチューンをコントロールすることが出来るので、SUPER SAWのような分厚いノコギリ波形でも簡単に作り出すことが出来ます。12ボイスのユニゾンサウンドと聞いただけでもぶっといであろう事はすぐに想像出来ます!
FILTER セクション
FILTER
2ポール/4ポール LOWPASS
HIGHPASS
BOOST
アナログのローパスフィルターを装備。このフィルターは2ポールか4ポールかを選ぶことが出来るので、理想の帯域がカットがしやすくなっています。また、ハイパスフィルターは独立しているので、多彩なフィルターコントロールが可能になっています。
フィルターエンベロープは独立してコントロール可能で、「INVERT」スイッチを使ってエンベロープの動作を反転させることも出来ます。
BOOSTは、フィルターを通過した最終的な音の低域をまさにブーストするパラメータになっていて、ベースサウンドなど、「ぶっとい音」を作るには使えるパラメータが用意されています。
VCA/HPF/ENVELOPES セクション
エンベロープ
3基のエンベロープが用意されていて、フィルター、アンプ、モジュレーション用があります。レイアウト上は1組のエンベロープスライダーしかありませんが、エンベロープ下のボタンで瞬時に切り替えることが出来るので、とてもエディットしやすいです。
エンベロープカーブも用意され、3つのカーブの中から選択して微妙なエンベロープカーブを作り出し、細かな音作りを表現することが出来ます。
モジュレーション用のエンベロープは、モジュレーションマトリクスの「ソース」変調元として、「デスティネーション」の変調先をピッチにすることで、簡単にピッチをエンベロープで変調出来ます。
ハイパスフィルター
ローパスフィルターの他にハイパスフィルターが独立して用意されているので、二つのフィルターを組み合わせて、多彩な音色変化を作り上げられます。
VCA
VCAのスライダーでプログラムの最終的なボリュームコントロールが出来るので、プリセット毎の音量を揃えたりするのに非常に有効です。
高機能なiPadのエディターソフト
DeepMind12は、内蔵するWi-Fiによって、ケーブルレスでiPadと接続することが出来ます。あらかじめ無償のエディタソフトをiPadにインストールしておくことで、iPadに接続した時からまるでiPad内のシンセサイザーアプリを操作しているような感覚に陥ります。エディタソフトもカラフルで非常に良く出来ていて、レイアウト的にもとてもわかりやすく出来ています。
エディタソフトがあることで本体ではエディットしづらいシーケンスパターンやアルペジエーター、エフェクトのセッティングも楽に操作することが出来ます。
「超」強力なエフェクターを搭載
内蔵するエフェクターは34種類、ルーティング可能な4つのエフェクタースロットを搭載しています。
DeepMind12が凄いのは、「リアルアナログのポリフォニック・シンセサイザーである」という事以外に、あのTC ELECTRONICとKLARK TEKNIKのエフェクターを惜しみなく搭載しているというところでもあります。
アナログならではの抜けの良い音やアナログフィルターの効いた本物のアナログシンセサウンドの音は単体でももちろんいいのですが、これらのブランドのエフェクターを最終的に通すことで、数倍もの効果が音に現れます。一番わかりやすいのは、シンセパッドサウンドだと思います。DeepMind12のパッドサウンドは、TC ELECTRONICの定番である空間系のコーラス、リバーブ、ディレイなどによって、広がりのあるリッチなサウンドにしてくれます。
これは、デモ&レビュー映像では是非、エフェクターの効果を意識してサウンドを聴いてください。
DeepMind12は、高品位なエフェクターが最終的な音の出口のパーツとして一体化しているので、アナログサウンドとエフェクトの融合によって、今まで聴いたことないようなスペーシーなパッドサウンドや、暖かいパッドサウンドを作り出すことが出来るのだと思います。
モジュレーション・マトリクス
モジュレーション・ソース:19 デスティネーション:129 スロット:8
DeepMind12は、8つのモジュレーションマトリクスを使用して、さまざまなパラメータをコントロールすることが出来ます。今までのアナログシンセではパッチングでしか実現出来なかった機能を内部的に結線することで、様々なソースに対して、変調をかけることが出来ます。
これらのエディットには、インターフェースがリアルで、音作りが楽しくなるタブレット端末(iPAD)を使用することをお勧めします!
コントローラーとリアパネル
コントローラー セクション
左手元には操作しやすいよう、シンセサイザー定番のコントローラーが並んでいます。
- マスターボリューム
- ポルタメント
- オクターブシフト(アップ・ダウン)
- ピッチベンドホイール
- モジュレーションホイール
バックパネル
必要な入出力端子は全て、内蔵Wi-Fiインターフェースまで
装備しています。
- ステレオアウト(L,R)
- PHONES
- SUSTAIN
- PEDAL/CV
ペダルはモジュレーションマトリクスでフィルターカットオフなどのパラメータをアサイン可能
- MIDI(IN/OUT/THRU)
- USB
- Wi-Fi(内蔵)
これがBehringerが初めて作ったリアルなアナログ・ポリフォニック・シンセサイザー「DeepMind12」です。本格的なのに初心者でも手が出しやすい価格帯で、飽きることなく、長く使い続けることが出来るシンセサイザーだと思います。