ROLAND JX-8P

アナログシンセサイザーがポリフォニック化されたシンセサイザーが日本の国産メーカー各社に開発され、コンシューマ向けに低価格なモデルとしてヒットしたROLANDのJUNO、αJUNOシリーズの後継として、80年代の前半にJXシリーズが登場しました。

JX-3P
JX-8P

今回紹介するJX-8Pの特徴としては・・・・

  • 操作パネルのデザインがタッチラミネート式のプッシュボタン(後のDX-7なども同じような作り)によるボタンレス
  • 近未来的なシルバーを基調として、ボタン部分をカラフルに飾った奇抜なカラーリング(JX-10は、グレーのシックなカラー)
  • サウンドのエディットは、DIN規格のケーブルで接続したPG-200(JX-3P)、PG-800(JX-8P)の外部プログラマーモジュール(別売)によって行う方式(本体のみでも可能)

細部の紹介

パネル左部分

メインボリュームその他、主にコントローラー系のスライダーを装備。ROLANDの特徴あるベンダーは、近未来的な円形でピッチとLFOをコントロール。

各種エディットパラメータ、モード切替、コントローラ、バンク・パッチ

ROMプリセットは、パネルにプリセット名が印字されています。


プリセットボタンとパッチ表示ディスプレイ。パッチエディットは、右の表にあるパラメータをもとに、エディットモードからパラメータNOを選択、スライダーでエディットという、DX7と同じような操作方法。

今回のレビューで紹介しているJX-8Pの主なスペックは、

  • オシレーター:12DCO(DCO:ピッチを安定させるため、デジタルコントロールされたオシレーター)
  • 最大発音数:6ボイス(1ボイスあたり、2オシレーター)
  • その他:1VCF、1VCA、ベロシティ、アフタータッチ、クロスモジュレーション、ピッチエンベロープ
  • パッチメモリー:インターナル=64、ユーザー:64
  • インターフェース:MIDI IN/OUT 、DIN(専用エディター接続用)、専用メモリーカートリッジ
バックパネル

シンセサイザーのスペックとしては、かなりオーソドックスな構成で、やはりチューニングが不安定なVCOを採用するよりも、よりピッチが安定したDCOを搭載するというところが、当時の流れでした。

パッチモジュラー式ではない、鍵盤型のアナログシンセサイザーとしては、音作りの可能性を最大限詰め込んだ機種だったと思います。オシレータ、フィルターの種類、アルペジエータ搭載を除き、名機であったJupiter-8やJupiter-6と同じようなスペック、構成で、ROLANDでいうクロスモジュレーション(リングモジュレーション)の搭載が、音作りにとっては大きな特徴でした。

ただし、こちらのJX-8Pでは、鍵盤のベロシティ、アフタータッチによるサウンドコントロールが可能だったので、表現力という意味ではJupiterシリーズよりも上手だったかも知れません。

クロスモジュレーションによる倍音付加によって、金属系、ベル系の音や、豊富な倍音を含むPADサウンドなどが簡単に作れました。オシレータシンクによるシンクサウンドや、ピッチエンベロープによるサウンドも特徴です。

ちょうど、この時期に前後してYAMAHAではシンセサイザーに革命を起こしたと言っても過言ではない、FM音源方式のDX-7が発表され、遅ればせながらも、ほぼ同時期にROLANDではDX-7に引けを取らないほどヒットした、デジタルPCMワンショットとアナログ音源のハイブリッド型シンセサイザーだったD-50が発表されるなど、デジタル方式のシンセサイザーが登場する時代の節目、過渡期にあったことが、このJXシリーズの不運でした。

今聴いてもこの暖かなウォームパッドサウンドのウネリや、アナログシンセサイザーのオシレータで作られた独特の金属系サウンド、シンク系、エレクトリックピアノ音などは、時代や流行に関係なく、非常に分厚く、好まれるサウンドです。

プリセットもインターナル(呼び出しのみ)64パッチ、ユーザー64パッチと、標準で128種類のメモリーを搭載し、それ以上のパッチはDX-7でも見られたような、外部専用カートリッジに格納される方式でした。

ムービーでは、インターナルのプリセット、ユーザプリセットをデモ演奏とともに紹介しています。今回は、映像による機種の説明ではなく、そのサウンドに重点を置いて、ただひたすら弾いて、紹介しています。

鍵盤型のアナログシンセサイザーとしては、エレピや金属系の音など可能な限りのサウンドを搭載し、それを活かす表現力を持っていたと思います。

やはり、アナログ音源は気持ちいい!

さらにおすすめ

YAMAHA TENORI-ON

ヤマハ「TENORI-ON」は、その特長的な外観や、当初イギリスのみでの戦略的な販売方法など、巷の話題を席巻しました。ようやく国内販売でも商品が出回るようになり、多くのミュージシャンが様々なクリエイティブを駆使し、素晴らしい作品やライブパフォーマンスを発信しています。 何といって...

Roland JUPITER-X / Xm

シンセサイザーの世界で JUPITER と言えば、Roland が1980年前後に発売した JUPITER-4 、JUPITER-8、JUPITER-6 (発売順)、この3つの JUPITER シリーズが日本を代表するポリフォニック・シンセサイザーの名機として有名です。 状態の良...

ARTURIA V Collection 6

ARTURIA 定番のパッケージ・ソフトウェア、V Collection がバージョン6となって登場しました。今回のバージョンから新しいインストゥルメント、DX7 V , Buchla Easel V , Clavinet V , CMI V、この4つが追加さ...

SONAR V-STUDIO 100

音楽制作におけるハードウエアとソフトウエアの融合が、スゴイ完成度、かつリーズナブルな価格で実現してしまったSONAR V-STUDIO 100。今回も私、どっぷりハマってしまいました。 その特長を3ポイントでまとめると、 高品位オーディオ&MIDIインターフェース、デジタルミキサ...

AKAI professional APC40

その連携するDAWはableton”LIVE”。いまやDJ、トラックメーカー系ユーザー御用達のリアルタイムコントロールが売りの音楽制作/ライブパフォーマンス用音楽ソフトウエアです。 今回紹介する「APC40」はAKAI professionalとableton社との共同開発による...

ZOOM ZFX 応用編

この「応用編」では、オリジナルパッチの作成とエディット方法にスポットを当てて解説していきます。 まずパッチの作成からです。 それでは、少々凝ったセッティングのパッチを作ってみましょう。ZFX Plug-inには「Splitter」というツールが用意されていて、ギターの出力を2系統...

もっと記事を見る

page top