KILOHEARTS Phase Plant
- 2020/02/10
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ここに注目:
- 直感的にわかりやすいセミモジュラー型のシンセサイザー
- 音をリアルタイムに変化、コントロールすることが簡単に出来る
- 多彩なモジュレーション設定とマクロコントロール
KILOHEARTS のモジュラー型シンセサイザー、Phase Plant です。Phase Plant を使ってみて思ったのは、メーカーが言うモジュラー型と言うよりも、ヴァーチャル・アナログ/デジタル方式のサウンド・ジェネレーター(オシレーター)を搭載し、エフェクトとモジュレーションを使って自由に音をシンセサイズとコントロールが出来る、セミモジュラー型のシンセサイザーだと思いました。
PhasePlantの特徴
モジュラー型のシンセサイザー(ソフトウェア音源)と言えば、Arturia の Modular V、SOFTUBE の MODULAR 、Cherry Audio の Voltage Modular など、本格的なアナログ・シンセサイザーのモジュールをエミュレートした製品があり、プリセットを使わずにイニシャルパッチから音を作ろうとすると、パッチケーブルでモジュールを信号の流れに沿って結線しなければ音を出せなかったり、あらかじめ用意されたサウンドのテンプレートから音を作り始めるタイプで、シンセサイザーの基本を知っているだけでは音作りの自由度が高すぎて、ある程度のスキルが無いと一から音を作るには少々敷居が高いと思います。
その点、KILOHEARTS の PhasePlant は、モジュール型と言いつつも、基本的なモジュールの結線は内部的で解決されていて、オシレーター、モジュレーション、エフェクトの各モジュールを選択していく方式なので、音作り音の加工に専念する事ができるセミモジュラータイプです。
Phase Plantの構成
Phase Plantを知る前に、KILOHEARTS の Snapin という のオーディオ・エフェクト・モジュールのことを知っていた方がわかりやすいので紹介します。
Snap Heap と Multipass
KILOHEARTS の製品には、 Snap Heap というオーディオ・エフェクト・モジュラー用の Free のホスト・プラグインがあります。Freeとは言え、ホストプ・ラグインと基本的なオーディオ・エフェクト・モジュールであるSnapin(3-Band EQ, Chorus, Delay, Gain, Limiter, Stereoが付属)で構成され、それ以外のモジュールは単体もしくはバンドルで別売りになっています。
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この Snap Heap は、Snapin と呼ばれる単体のオーディオ・エフェクト・モジュールを自由に組み合わせる事で、さまざまな形でサウンドを加工するエフェクト・モジュールのホスト、フレームワークです。
Snapin (Audio Effect Module)
Snapin は、Snap Heap(Freeのホスト製品)や MultiPass(マルチバンドのモジュラー型マルチエフェクトバンドル製品)、今回の Phase Plant でも使用可能なオーディオ・エフェクト・モジュールのことを指します。
Snapin は、Freeの基本モジュール以外は単体のモジュールとして購入したり、Phase Plant の上位グレードや、TOOLBOX という Snapin のバンドル版で入手する事が出来ます。
Phase Plant のシンセサイズ方式
Phase Plant は、シンセサイザーの音源モジュールから生成される波形の音声信号を加工、Snapin モジュールのシグナル・ジェネレーター、エフェクト、モジュレーターを使って音の加工や変調(モジュレーション)して音を作る方式のシンセサイザーと考るとわかりやすいと思います。
それぞれのモジュールは自由に追加、配置することで基本的な信号は自動的に結線されて音が出力されるので、様々な組み合わせや順序で使用したり、モジュレーションのパッチングとそのアマウントを設定することで、自由にサウンドをコントロールすることが出来ます。
そういう意味では、 Phase Plant は、モジュレーションとエフェクトによる加工ありきのシンセサイズ方式です。
Phase Plant は、
- GENERATORS(左)
- EFFECTS(右)
- MODULATORS(下)
- マクロコントロール(画面の一番上部分)
から構成されています。
GENERATORS
GENERATORS はシンセサイザーのオシレーター部分で、Signal Generator と呼ばれています。音源として用意されているモジュールは、
- ANALOG Oscillator
- WAVETABLE Oscillator
- SAMPLE Player
- NOISE Generator
4つのシンセシスのモジュールが用意されていています。
他に、
- Filter Effect
- Distortion Effect
- Output Module
- Mix Module
- AUX Module
- Groups ...Other
など、オシレーターのセクションとは少々イメージが違うモジュールがあります。
Phase Plant の GENERATORS は、シンセシスの音源モジュールと加工用のモジュールを組み合わせ、ここで基本的なサウンドの要素を作っています。
オシレーターとなるセクションに Filter や Distortion があるので少々混乱してしまいますが、GENERATORS は、基本的な音を生成するための大きなセクションで、オシレーターシグナル生成の一部として Filter や Distortion を使って信号を加工している。と考えるとわかりやすいでしょう。
また、Groups のモジュールでは、異なるオシレーターのモジュール群をグループとしてまとめ、他のグループと合わせてレイヤーサウンドを構成する時などに使います。
EFFECTS
EFFECTS のセクションは、3つのレーンで構成されています。Signal Generator で生成された波形の信号を3つのレーンに分岐させることが出来るので、それぞれのレーンで異なるエフェクトを使用することが出来ます。
ここで言うEFFECTとは、空間系、ダイナミック系などのエフェクトをかけたり、シンセサイザーのフィルターの役割も備えた部分です。その点が、普通のシンセサイザーと少々異なって見える部分ですが、このEFFECTの部分が PhasePlant、Snapin モジュールの最大の特徴でもあります。
この EFFECTS レーンの中で、Phase Plant が保有する様々な Snapin を選択、組み合わせをして、音、音声信号を加工していきます。もちろん、フィルターとなるモジュールも、Filter、Comb Filter、Formant Filter、Ladder Filte など、パッケージによって別売りになる Snapin もありますが、さまざまなフィルターが揃っています。
他にも、Snapin のモジュールが全て利用出来るので、音の加工に関しては元の音を破壊してしまうほど、さまざまなモジュールが用意されています。
MODULATORS
Phase Plant のもう一つの特徴なのが、この MODULATORS です。シンセサイザーのエンベロープや LFO はもちろん、Random Modulator や MIDI Modulator 、Multiply Modulator など、普段聞き慣れないようなモジュレーターのモジュールがあり、自由に選択、配置することが出来ます。
モジュレーターは、変調のソースとなり、モジュレーターのコネクターと変調先のコネクターをクリックで接続し、アマウントを設定することで、変調出来ます。もちろん、接続可能な端子は全て可視化され、複数の変調先に同時接続することも出来ます。
Phase Plant は、このモジュレーターが音を劇的に変化させます。この不思議な音の変化は、400近いプリセットを聴くだけで、視覚的にもサウンド的にも非常に楽しめる機能です。
マクロコントロール
マクロコントロールは、普通のシンセサイザーではパラメーターをアサインして使用するボタンやツマミです。もちろん、Phase Plant のツマミであるマクロノブでも同様にパラメータをアサインして利用しますが、Phase Plant は膨大なパラメータやモジュレーション、エフェクトパラメータを1つのマクロノブに複数アサインできるのが特徴です。
8つのマクロノブにパラメータをアサインすることが出来、右側にはコントロールの名前を設定することが出来ます。キャプチャ画像で右側にオレンジの丸いアイコンが見えますが、これは接続されているパラメータとそのアマウントを見ることが出来ます。
この一つのマクロノブを回すことで、アサインされた数種類のパラメータがリアルタイムで同時に動作するので、音色の変化する具合が半端ではないです。
出来れば全部入りのパッケージを手に入れたい
Phase Plant は、モジュール型とは言え、モジュールを組み合わせてパッチングして音を作る今までのモジュラー型のシンセサイザーとは違い、加工する為のモジュールを組み合わせる、接続するという仕組みのシンセサイザーで、かなりの自由度でサウンドを作り、コントロールすることが出来ます。
その特徴的な役割をするのが、Snapinsというモジュールです。KILOHEARTSでは、このSnapinsを単体でも販売しています。Phase Plant も3つのグレードで、基本的なモジュールセットから、全部入ったオールインのパッケージがあります。
Phase Plant を触れば、いずれ全てのモジュールが欲しくなるので、可能であれば最初から全てがパッケージされたバージョンを購入することをお勧めします。
PhasePlantのサウンドの変化は、今までに無い「動き」をし、本格的なモジュラー系のシンセサイザーのパッチで自身をなくした苦い経験があったとしても、PhasePlantではモジュールによる音作りを楽しく使える仕組みになっています。パッチングの仕組みを覚えたり、モジュレーション、変調の仕組みを学ぶにもわかりやすい構造になってると思います。
Phase Plantのサウンド
Phase Plantは、アナログ系、ウェーブテーブル、サンプリング系など一通りのサウンドエンジンを搭載していて、モジュレーションで様々なコントロールが出来るので、多彩な音を作ることが出来ます。
中でも個人的に気に入ってるのが、アナログ波形の太さとザラつきの質感、複数のフィルターによってカットされたサウンドの質感がとても気に入ってます。アナログ系のサウンドとウェーブテーブルの波形をコントロールして混ぜたPAD系のサウンドなど、とてもいい音です。
また、エンベロープの立ち上がりの速さも鋭いので、パーカッシブなサウンドやアタックの強いベースサウンドも魅力です。
いくつかのサウンドを紹介します。
デモで使用したサウンドは、リズムのLOOPサウンド以外は、すべてPhasePlantでInit Patchから作り込んだサウンドです。PhasePlantは音楽的に使える音もとても作りやすいので、アナログ感があるサウンドのパッチを作ってみました。
パッチはわかりやすいように、なるべく少ないモジュールを使用して作っています。少ないモジュールでも、デモのサウンドのようにアナログ感のある分厚い音が出せます。
Bass Sound Sample
Bass Soundは、二つのアナログモジュールを使用しています。
一つ目のAnalogモジュールでは、ノコギリ波をユニゾンモードで2を設定し、Detuneで厚みを出しています。Phase Plantでは、モジュールにユニゾンモードが付いているので、一つのオシレーターモジュールでも十分に厚い音を発生させることが出来るようになっています。
2つめのAnalog モジュールでは、Syncのツマミでオシレータシンクのシミュレートを利用してオクターブ上の倍音を足しています。Syncは、普通2つのオシレーターを同期し、音程を使って掛け合わせますが、Phase Platでは、一つのオシレーターにそれよりも高い周波数でSyncをシミュレートすることが出来るようになっているので、Syncツマミを回していくと高い周波数の倍音でSyncがシミュレートされていくので、波形のディスプレイを見ると、ノコギリ波の周期が細かくなっていくのがビジュアル的にわかります。
Filterは、GENERATIONSのFileterとEFFECTのLadder Filterを立ち上がりの速いエンベロープのMODULATIONを使ってアタックを強調したベースサウンドにしました。Envelopeのモジュールから、FiletrとLadder Filterにパッチングしてコントロールしています。
Brass Sound Sample
Brassサウンドは、Prophet-5のパッチにあるような1つのオシレーターを使ってシンプルにしたかったので、Analogモジュールのノコギリ波をそのままフィルーターを通し、エンベロープでFilterとLadder Filterをコントロールしているだけのシンプルな構成です。
EFFECTで、3BandEQを使って音を調整し、最後にLimitterと軽くReverbを掛けたシンプルなサウンドですが、アナログオシレーターとキレのいいフィルターをエンベロープでコントロールしたサウンドにしています。
Pad Sound Sample
Pad Soundは、AnalogオシレーターのUnisonとDetuneを使って、いつのオシレーターで厚みを出しています。オシレータにあるFilterでベーシックな波形を生成し、オシレーターのOUTにあるエンベロープのみで、音をコントロールしています。この場合、音量がコントロールされるので、VCAのエンベロープと同じ意味になります。
OUTをEFFECTのLane1にし、Ladder Filterを通して、音を削るとともに、軽く歪ませいています。そのあとのEFFECTの特徴は、Ensembleを使って、音のうねり、コーラス効果とステレオの広がりをだして、最終レーンでDelayとReverbを掛けています。
このエフェクトのレーンの使い方は、決まりは無く自由なので、一つのレーンで縦に並べても同じ効果は得られます。
MODULATIONでは、MIDIのNOTE信号(ピッチ)でLadder Filterのカットオフをコントロールすることで、KeyFollowの役割をしています。
WaveTableを足したPadSound
もう一つのPADサウンドは、AnalognoPadのサウンドにレイヤーでWavetableのモジュールを足しています。
Wavetableの波形を選択して、MODULATIONのLFOで波形の周期をコントロールすることで、Wavetableの波形を読み出して、ウネリを出しています。Wavetableの波形はデジタル波形なので、UnisonとDetuneで厚みを持たせ、Spreadで広がりを出しています。エンベロープもOUTのエンベロープだけを使って、音量をコントロールしています。
販売情報
Phase Plant は、いくつかのパッケージングで販売されています。
購入の前には、Snapin の Free 版をダウンロードして使ってみたり、Phase Plant のデモ版をダウンロードすることで、この製品の素晴らしさがわかると思います。
KILOHEARTS TOOL BOX FREE(Freeダウンロードサイトリンク)
Snapins kHs Toolbox ULTIMATE
Phase Plant や Multipass、Snapin モジュールの全てがバンドルされています。
一番のお勧め、全部入っています。
Kilohearts snapins kHs Toolbox ULTIMATE (ダウンロード販売)
Phase Plant
Phase Plant は、バンドルされるSnapin モジュールの内容の違いで3つの製品が用意されています。
Kilohearts Phase Plant PROFESSIONAL(ダウンロード販売)
Kilohearts Phase Plant STARTER(ダウンロード販売)
Kilohearts Phase Plant (ダウンロード販売)
最も基本的なセット