YAMAHA DX-5

今回紹介するのは、デジタルシンセの元祖YAMAHA DXシリーズの中堅モデル「DX5」です。

DX5(当時の価格:¥598,000)

1980年代初頭、アナログシンセ全盛時に突如登場したFM(フリキュエンシー・モジュレーション)音源という、未知のデジタル方式によるシンセサイザーとしてあまりに有名なDXシリーズ。私自身も当時、アナログシンセをガンガンに使ってライブやレコーディングに明け暮れていたところに、「今度ヤマハからデジタルの凄いシンセが出るらしいぞ…」という噂を聞きつけ、ワクワクしていた頃が懐かしい!

当然、1983年のDX7発売時には即効で手に入れ、FM音源の仕組みを理解すべく朝から晩まで食事も忘れ、音作りの可能性に没頭していました。FM音源の仕組み自体はアナログシンセでも可能なので簡単だったけど、莫大な組み合わせや相乗効果によるFMならでは変調は、アナログシンセの全く及ばない領域に達していた。でも最高に面白かったですね。

FM音源ヒストリー

●GS1~1980年

GS1(当時の価格:¥2,600,000)

FM音源は、1970年晩年にジョン・チョウニング博士を中心としたスタンフォード大学によって開発され、ヤマハがそのライセンスを受け実用化し研究開発を進めた。その最初の機種。TOTOの代表的アルバム「TOTO Ⅳ」では“Africa”をはじめ、ほとんどの曲でFM音源独特のアコースティック感のある金属系マレット・サウンドや重厚なブラス・サウンドなどのGS1サウンドが聞ける。

●DX7~1983年

DX7(当時の価格:¥248,000)

¥248,000という当時としては破格の価格で登場。この年以降のヒットチャートはすべてDX7サウンドで埋め尽くされ、特にFM音源お得意の金属ハンマー音が特徴的なエレクトリック・ピアノはDXサウンドの代名詞となった。

●DX1, DX5~1984年

DX1(当時の価格:¥1,950,000)

DX7二台分の音源を搭載したフラッグシップ・モデル。

●TX816~1984年

TX816(当時の価格:¥890,000)

DX7を音源モジュール化しラックマウント可能なサイズに8台分詰め込んだ。

●DX7Ⅱ~1986年

DX7ⅡD(当時の価格:¥258,000)

DX1、DX5と同様の2台分のFM音源を搭載し、軽量化を中心にユニゾンモード等の新機能やフロッピーディスクを搭載(FD)した。

●TX802~1987年

TX802(当時の価格:¥198,000)

DX7Ⅱ相当の音源モジュールで8パートのマルチティンバーに対応した。

●SY77~1989年

SY77(当時の価格:¥300,000)

FM音源とPCM音源を掛け合わせる事ができるRCM音源。オペレータにサイン波以外の波形も搭載されフィルター加工もでき、音作りの幅が大きく広がった。

●PLG150-DX~1997年

PLG150-DX(当時の価格:¥35,000)

1990年代はシンセの音源もリアルさを追求した結果、サンプリング技術が全盛となりPCM音源が主流となったが、FM音源はシンセサイザーの拡張音源として進化した。

●FS1R~2000年

FS1R(当時の価格:¥110,000)

新たな次世代FM音源のアプローチとしてフォルマント・シンセシスを搭載した。

●DX200~2001 年

DX200(当時の価格:¥59,800)

ダンス・ミュージック制作に特化したFM音源として多くのツマミを配して登場。

●ソフトウエアによるFM音源~2000 年以降

FM音源はDSPの劇的進化によりコンピューター上で再現できるようになった。

Native Instruments FM8(KOMPLETE 6にバンドル:¥59,800前後)
OXE FM Synth(ドネーションウェア)

●携帯電話用音源チップ化~2000 年以降

携帯電話用のオーディオプロセッサーに統合され、音源チップとして超小型化される。性能的にはSY77を凌駕している(!)

ヤマハLSI「MA7」

FM音源のしくみ

FMとは、周波数変調=Frequency Modulation(フリークエンシー・モジュレーション)の意味で、周波数(音程)による2つ以上の波形の掛け算を意味します。DXシリーズにはオペレータというサイン波を発信する箱が6つあり、それを並列、直列に組み合わせることにより、32のアルゴリズムが選択できます。

例えば下記の写真にあるDX-5本体にプリントされたアルゴリズムNo5番目のような構成の場合、「2」のオペレータが「1」のオペレータを変調し、「1」のオペレータから音声が出力されます。

同様に「4」から「3」へ、「6」から「5」へ変調され、それぞれ「3」と「5」から出力されます。

すなわち、このアルゴリズムだと、3系統の出力となります。

出力される波形はそれぞれのオペレータの音程や音量で変化しますが、基本的に音程が1:1の場合は「ノコギリ波」、1:偶数の場合は「矩形波」となります。もちろん非整数倍の音程を掛け合わすと簡単に金属音となります。

さらにDXシリーズの大きな特徴は、それぞれのオペレータがエンベロープ・ジェネレーターを持ち、127段階のベロシティを設定できることです。これにより、鍵盤のタッチ(イニシャル、アフター)によりアコースティック楽器に匹敵するダイナミクスを得ることができました。

下図はDX5にプリントされているアルゴリズムの一部ですが、上に積み上がるオペレータが多いほど過激な音色を作れるのは言うまでもありません。

DX5の機能

さて、今回紹介する「DX5」は、2台分のDX7が1台に凝縮された当時でもハイエンドな機種です。値段も\598,000と高額で、なかなかアマチュアが手軽に手をだせるシンセサイザーではありませんでした。そういう意味でも、当時は私にとって憧れのシンセサイザーの一つでした。

今でも、初めてDX5を体験した時の感動は忘れもしません。ステレオ出力した時の包み込むような広がり感と重厚かつソリッドな出音に、完全ノックアウト状態でした。

では、パネルを見てみましょう。MOTIFシリーズにも継承されていますが、ボタンを左右に多く使用し、音色選択、エディット機能、各種ファンクションを機能的に配置するデザインの先駆けでした。

左サイドはピッチベンド、モジュレーション・ホイール。AとBの2系統のバランス、ポルタメント、データ・エントリーのスライダーが並んでいます。

その右には、6つのオペレータのセレクト、ON/OFFのスイッチ、A、Bそれぞれの系統のバンク選択ボタンがあります。紫色のプリントはエディット・モード時のパラメーター選択時に使用します。

中央部に2行のディスプレイ、その下でボイス(音色)を選択します。

右サイドは、A、Bの2系統で作成されたパフォーマンス音色の選択ボタンです。緑色のプリントはファンクション機能時のパラメーターです。

右端には、のDX1と共通のカートリッジ・スロット(A、Bの2系統)があります。その下にモードの選択ボタンがあり、シングル、デュアル、スプリットから選択できます。

リアパネルは、アウトプット、ペダル類の接続、MIDI端子が並んでいます。出力はもちろんA、Bをステレオ接続することで広がり感のある音場が得られます。プロ機器らしくキャノンによる出力端子も搭載。

2台分のFM音源による絶妙な音

やはりDX7、2台分の贅沢な出音は素晴らしい!!

ウォームでファットなブラスはもちろん、キーOFFまでプログラミングされた繊細なタッチを再現できるFMエレピ、本物を超えた金属感によるベル系音色、過激な効果音まで、どの音色も現役で使える音のオンパレードです。もっとも感じた点は、本物のFM音源の指に吸い付くような反応の良さです。このタッチのスピード感は昨今のPCMシンセによるサンプリングで再現されたFMサウンドとは一線を画します。

そのあたりをムービーで、ぜひご確認ください!気持~ちよくDX5を弾きまくっている私を見れば一目瞭然です!!

デモ映像

オフィシャルレビューHD版について

ミュージックトラックのオフィシャルレビューHD版では、映像はPanasonicのLumixのGH1を使用してハイビジョン映像を記録し、音声はマルチトラックでZOOMのR16を使用してデジタルレコーディングを行い、それぞれの素材をもとに映像編集しています。

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